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7月最終週の相場展望

2020-07-27

先週も引き続きドル安が継続した。まず先週発表された欧州主要国のPMIがことごとく予想を大きく上回ったことや欧州内で景況感が上向きとなっている上に欧州復興基金創設に向けて合意がなされて基金の詳細を詰めていることからユーロ高となり、それが結果的にドル安へと傾斜した一つの大きな理由である。ユーロに連動して、豪ドルやポンドドルなども対ドルで上昇一途となった。新型コロナウイルスの面からみても、米国は感染者増を止められず、また経済への悪影響を抑えるために新たな経済対策が民主党の反対にあって、なかなか議論が進まないことも重しとなっている。また経済対策に関連して、国の歳出が増大していることで国の各付けにも影響が出る懸念も増している。米国で現在の実施中の経済対策は、消費に直接影響がある給与保護プログラムが8月8日に期限切れとなり、それまでに新たな追加策の決定がないと消費に影響を及し兼ねないため、トランプ政権としては出来るだけ早く可決し実施したいところではないか。

先週の米国新規失業保険申請件数は7月11日週分で130万人と高止まりしており、来月の雇用統計へ不安感が台頭し始めた。コロナ感染銘柄が多い、ナスダック指数のリードでダウやS&P、またその他の各国株価はなんとか堅調さを保ってはいるが、そのナスダックが崩れると調整局面到来となりそう。感染者が増え続けている中では、早急に追加経済対策が可決されるかの行方は全相場の注目となってきそう。米国政府は、言葉にはしないが現在の環境下では実はドル安の方が都合がよいと考えているはずだ。国内需要に不安がある中では、外国への輸出増で国内企業を支えることが可能だ。また、香港国家安全維持法に絡んで中国に圧力をかけていくことで支持率を上げたいトランプ政権も貿易面からはドル安が防衛策の一つとなる。逆に中国サイドは、そうはさせまいと中国元を今年最安値まで下落させて対抗している。また米中間での大使館閉鎖などの動きも、貿易交渉など含め経済環境悪化に繋がると不安視されている。

欧米では、PMI指標以外に重要な経済指標はなく、米国では新築住宅販売件数が予想を上回ったが、新規失業保険申請件数が予想を上回り雇用環境が悪化しており、今後また失業率の上昇懸念が出てきたことなど経済情勢を前向きとなるような指標が少なく、株式相場では利食いが優勢の展開となった。

日本では、実質二次感染者増の最中に「Go Toトラベル」という政策で弱体化している需要を掘り起こし、旅行関連への消費を促しているが、タイミングが悪い長梅雨と二次感染者の急増で、政府は足元を掬われそうな気配がしている。国民は、1次感染者数以上になった2次感染者数の増加を目にしても緊急事態宣言等の声明は出さず、その理路整然とした理由も説明しない政府に対して、不安感や反発が日々強まっているようだ。そうなれば、現政府の支持率は低下し、株価へも悪影響を及ぼしかねない。ドル円はドル安理由での円高で105円台まで下落したが、円を一方的に買う理由が今以上に強まるとは考えづらい。下がるとしたらFOMCからの一層のドル安が主因となるだろう。日本政府のコロナウイルス感染者増に対する政策などの方向性は読みづらいが、日銀は金融緩和を拡大していく方向性だけは明確であるからだ。今週は米国FOMCが開催予定で、感染者拡大中の米国経済へ不安感が募っている中銀メンバーの意図がパウエル議長の記者会見内容で明らかになり、更なる今後への緩和期待までも市場は予想をしていることで、期待のドル安をも含んでいる。今は下げ期待でドルを売っている段階であり、結果後に買戻しとなる可能性もありそう。もし議長が景気に対して様子見感を表明すれば更なるドル安の可能性も残るが、第二次感染増に対して不安感を大きくしていたFRB委員達のコメントなどを鑑みると、新型コロナウイルスへの警戒感は拭えない発言が予想される。

さてテクニカルからの相場分析だが、豪ドルは2017年から今年3月の安値までの61.8%戻しを0.7132回復で達成した。金曜日は一時的に0.7183とそのレベルを大きく上回ったが、0.710台へ戻して終了している。約4か月でここまで急騰となっているだけに過熱感は台頭している。ここから0.72より上に行くには新たな材料が必要ではないだろうか。今週中はもみ合いで、0.70-0.7180のレンジ相場を想定しておきたい。

またユーロドルは、豪ドル以上に上昇率が大きくなっており、2007年のリーマンショックからの長期下落トレンドライン直前のところに差し掛かっている。このラインを上抜けするかは重要なところだと考えており、抜ければ上昇トレンドへと大きく前進しそうな勢いである。トレンドラインを上に抜けると次は1.1820付近がターゲットとなるから、今週の動きには注目していきたい。ユーロの上昇と連動して、金もまた2011年の高値奪回寸前まで上昇している。こちらは短期では過熱感が少なく、世界の感染者増が止まらない現状では1921ドル付近の高値を抜きにいくのは時間の問題であろう。そうなれば2000ドルの節目が見えてきそうだ。

今週は、まず米中大使館閉鎖など双方の摩擦懸念は引きつづき警戒され、新型コロナウイルスの感染者推移から米国の新たな経済対策やFOMCを踏まえて、ドル安が継続するのかが注目される。株価は軟調気味の推移となった先週の動きであるが、新規感染者数が大きく加速しない限りは下値も制限されると考える。気になるのは中国の株価で、変動率が高まっているだけに、米中摩擦などで下押しする可能性もある。アジア時間では中国株の動きは要注意となるだろう。イベントや経済指標発表が少なかった先週に比べ、今週は通常に戻った感じ。注目度が大きいのは、米国FOMCとパウエルFRB総裁の記者会見で、次いで欧州全体とドイツ、フランスの4-6月期のGDP発表。米国は、先週数値が悪化した新規失業保険申請件数と6月個人消費や7月ミシガン大学消費者態度指数などが重要度は高いだろう。米国内での新規感染者数の増加が消費にどのような影響を及ぼしているのか、これらの消費関連指数は現状を読み解く一つのカギとなるだろう。

       
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