7月第4週の相場展望
2020-07-20
先週末、豪ドル円は74円後半で推移している。先月に昨年12月の高値を抜け、76.79まで上昇した後調整に入り、同月後半に72円半ばまで下押ししたが、再度じりじりと値を上げてきた。新型コロナウイルス感染の再拡大に懸念を示す声は少なくないが、最近のリスクオンムードが支えになっているという。日本の金融先物取引業協会によると、店頭外国為替証拠金取引(FX)業者を通じた豪ドルの6月の取引金額は78兆3376億円と、今年3月の70兆円を上回り過去最高を記録した。「月前半の大きな変動で取引が活発化した」(FX関係者)という。豪ドルは5月末の71円台から、経済活動再開への期待から大きく買われていた。5月には国内投資家が、過去最大の豪ソブリン債(政府保証の債券など)購入に動いたことが明らかになっている。この通貨も新型コロナウイルス感染者数の推移に左右されそうだが、各国先進国の通貨が買いにくい状況にある中では、テクニカルでの上向きトレンドがしっかり継続している豪ドルの通貨ペアーは、消去法での買いもあって堅調推移を継続すると考えている。
ドル円は、先週106-107円台で推移している。ここ数か月のドル円平均価格からは若干円高な数値で上値が重い感じがしている。その理由は、米国FRB委員からの米国経済への悲観的な見方が日銀のスタンスと違うのが背景となっているようだ。日本でも新規の感染者数が再度増加しており、ドル円に限っては動きづらい展開が続いているにも関わらず、日銀の黒田総裁は、先週水曜日の金融政策決定会合後の記者会見でも、「日本の景気は底を打った、年後半は上昇へ」という発言をしている。今週の後半は日本が連休に入るため、日本国内の二次感染者拡大から再度緊急宣言などの政策が打たれてしまうと、リスクオフとなりやすく、円高仕掛けに注意したい。
中国は、7月1日に香港国家安全維持法を施行したことで、市場関係者の中では香港ドルと米ドルのペッグ制も崩壊するのではという憶測が飛び交っている。トランプ政権は、実質の中央銀行である香港金融管理局の米ドルへのアクセスを制限可能であり、ペッグ防衛能力を妨げることが可能である。ヘッジファンド勢が香港ドルを売り、米ドルを買う仕掛け的な動きの可能性も考えられ、思惑を先取りして米ドルはアジア時間では買われやすい状況となりそう。そのような背景下での出来事が以前幾つかあるが、その中でもジョージソロスが英国ポンドを大量に売ったことが有名である。1992年、巨大なクオンタムファンドというヘッジファンドを運営していたジョージソロスは、欧州が固定相場制に近いERMという目標為替相場制を採用していたため、欧州通貨に連動していたポンドが高止まりしていたところに目を付けて、大量のポンド売りを仕掛けた。その時は、ポンドドルは高値2.01台から半年で1.4台まで約30%も暴落したことで、ポンド危機とも言われている大きな出来事があったことを思い起こさせる。今回そのような事にはならないとは思うが、覚えておきたい出来事の一つである。
欧州や豪国では、新型コロナウイルス感染者再拡大に対応して、米国や日本とは比較的素早い規制を始めているようだ。規制する国と任意にさせている国がはっきり分かれてきたような感じがしている。それらの国々の対応策が今後の景気にどう影響するのか次第で、その国の通貨や株価の動きに違いが出てくるだろう。感染者数は検査数に比例するだろうから、新規感染者数だけではなく検査数までわからないと事実が見えてこないはず。各国政府の政策から、その数値を見せていないのか、検査数は測りかねるのか、新規感染者数だけでは事実は感染に把握できない。国民の消費行動マインドを低下させないためだろうが、新型コロナウイルスに直面する私たちにとっては、事実をつかむのは難しいのが現状で、新規感染者数だけが唯一の情報源となっているのが、個人投資家だけでなく、プロの投資家などにとっても先行きの読みづらさに繋がっているのではないだろうか。
米国では感染者拡大がリスクオフの動きにつながっており、株価はマイナス、為替はドル買いとなっている。現在の相場は、世界的なコロナ新規感染者数の増加に伴ったリスクオフで金とドルの買い要因となっているが、逆に各国の経済指標が予想を若干上回るものが多く、それが直接には株価と原油、間接的にはクロス円を下支えしているようだ。双方の要因がクロスオーバーしている中で、投資家もどちらに動いてよいのか気迷い気味の相場展開となっている。
今週は欧米でPMIなど景況感の発表が多くあり注目したい。基本的には、米国や日本の新規感染者数推移と経済活動度合いのトレードオフ関係から相場は小動きとなりそう。これまで良かった経済指標発表が少ないのは株価にはネガティブ要因かもしれない。引き続き新型コロナウィルスワクチンへの期待感は継続しており、開発へ前向きな報道があれば株価には支援となりそう。
<今週の注目点>
・新規コロナ感染者数の推移
・新型コロナウィルスワクチン開発推移
・米国大統領選挙前の支持率推移
・各国PMI発表
・欧州復興基金への動き
・日本連休中の円高懸念
・香港ドルペッグ制崩壊の思惑からの米ドル買い