6月最終週の相場展望
2020-06-29
先週ドル円は、5月初旬の安値以来で再度106円台前半まで下げ、6月11日の安値を下回り、105円台への突入も止む無しという感じであったが、106.07で下げ止まり、また107円に戻している。今回の下げの原因は、日本のソフトバンクグループが財務改善を図る意向で米国Tモバイルの保有株を売却し、売却した米ドルを日本円に戻す動きを警戒したと思われる。海外M&Aの中で、日本の企業が海外企業を買収する額は逆のパターンを差し引いても2019年は約10兆円で、企業や個人の海外債券買いも含め昨年も円相場に多大な影響を与えており、円高を防ぐ役目を果たしている。その中での2兆円となると、規模から相当の割合を占めるため、円相場には影響が大きいはず。しかしソフトバンクは、財務改善をする目的は示しているが、ビジョンファンドを含めグローバル展開をしているため、ドルの大部分をある程度海外に残す可能性も考えられ、売却予定額の約2兆円がそのまま円に交換されるかは決まっていない。この大きな円高への需給要因があっても、106円は下回らず107円に戻したということは、106円より下には相当額の買い需要が溜まっていると推測できる。上値では、今月初めの高値110円あたりは売り興味が多いはずで、現在はどちらかというと下値不安が比較的大きいと考えられる。しかしながら、新型コロナウィルスからの相当な大きな第二波からの悪影響がない限りは、ドル円はしばらく持ち合い推移の公算が大きいと思われる。基本的な理由としては、日米両国の金利差が非常に小さくなっていることと、貿易黒字が2000年以前のように際立って大きいわけではなく、経常収支が均衡していることが基本的な背景となっている。直近では米国で経済活動の再開と新規感染者再拡大は、トレードオフの関係にあり、連動性が高いため、ドル円の振れ幅が大きくなるとは考えにくい。短期では、円高のリスクの方が大きいが、新規感染者再拡大で経済の動きにストップがかかれば、FRBや政府の対策で持ち直し、経済活動がスローになれば感染者も減少となって、円高があっても一時的なものだと考える。
先週火曜日発表された欧米各国の景気指数である6月PMIは、欧州と英国が予想を上回り、米国は予想を若干下回っている。この結果、ドル安傾向が強まり、ユーロとポンドが上昇した。現在のテーマとしては、市場関係者の観点で見ると、新型コロナウィルスの悪影響からの経済再稼働後の経済と二次感染情勢が大きな注目点であるから、各国の通貨相場も同様に経済状況との連動が継続してしまう。スペインやイタリアなどの南欧などは、以前新規感染者は未だ多いものの減少傾向になっていて、日に数百人程度。それに対して米国は、24日には新規感染者が3万6000人となり過去最悪だった4月後半の数値に迫っており、実質第二次感染となっているのが現状であろう。テキサス、カリフォルニア、フロリダでは各州で一日5000人もの新規感染者が出ているようだ。しかし今年は、米国大統領選挙が11月に予定されていて、勝利を望むトランプ政権が無理をして経済活動を再開させていることが、仇とならなければ良いがと不安は尽きない。先週中は、二次感染への不安感から株価は世界的に軟調ながらも小幅な動きとなっている。株価に連動しやすいクロス円もまちまちで先週の動きは限定的であった。
先週発表の米国新規失業保険申請件数は、前週から減少したが、148万件と未だ高い水準を保っているのが気になる。今週は、先月の予想を良い意味で大きく上回った米国雇用統計への注目度が上がっているようだ。米国政府は失業者に対して大盤振る舞いを継続させていて、追加で週に600ドルをも増額し、一律で合計25万円以上貰えるようだ。失業保険額がアルバイト代より多くなる人も出ているため、しばらくは仕事を探して働くのをためらう人たちも増加しているようです。雇用情勢が流動的である現在は、今回も雇用統計から目が離せない大きなイベントとなりそう。
また日本でも、27日の土曜日に全国で112人となり二次感染の不安も高まりつつある。国内のディズニーランドは7月1日を再開決定となった。企業側も業務を再開させていかないと経営圧迫が一層大きくなり、それが雇用へも波及し、最終的には最終消費にも悪影響が及ぶため経済からは非常に難しい状況に直面している。巨大なテーマパーク再開で、消費マインドからは前向きとなりそうだが、感染者は増加しやすいトレードオフの関係が継続していくのはやむを得ない。距離を取り、マスク着用などで防いでいくなどの方法を取りながらの暫定オープンとなるのだろうか。感染者と経済活動間のトレードオフ関係が継続する間、リスクオンとオフの間で右往左往し相場はレンジ内で動く公算が大きいが、今週に限っては二次感染への懸念拡大で若干リスクオフとなり、ドルに資金が集まる方向が強いであろう。米国雇用統計までは、逆にクロス円の動きは制限されるのではないだろうか。
今週は、金曜日が米国の休場ということで、最大イベントであろう雇用統計は木曜日の発表となる。その他、米国での注目イベントとしては、水曜日に6月のISM製造業景況指数とADP雇用統計の発表がある。欧州では製造業のPMIの発表があるが、改定値であるため大きな影響はないと思われる。今回の米国雇用統計は、前回予想を大きく上回った非農業部門雇用者数が、今回予想が前月比でプラス300万人となっている。前回の予想が結果と大きく乖離したため予想があてにならない。今回は警戒感が高まると思っており、大きな変動の可能性があるため証拠金取引をなさる方は、ポジションを減らすか又は多めの資金を入れておくことをお勧めする。