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6月第4週の相場展望

2020-06-22

610日の水曜日に米国ダウ平均が約1800ドル、一日で約7%も大幅急落し、それまで新型コロナウィルスでの下落から順調に上昇推移していた株式相場に異変を感じさせた。その週末の金曜日にSQを通過した後、じりじりと値を戻している。米国FRBパウエル総裁は先行き経済へ厳しい見方を示したが、長期の低金利政策を明言し、経済を好転させるには何でもやるというような、以前のECBドラギ総裁のような言い方をしていた。その証明の一つとして、先週の議会証言の前日15日に、セカンダリーマーケットの社債を購入することを決定したことが市場への不安感を中和し、株式相場を堅調推移に戻るきっかけとなったようです。パウエル総裁は、1929年から始まった世界大恐慌を研究していることで有名で、その時、相場が下落し始めたに関わらずそれまでのバブルを収めるため、利上げを行ったことが恐慌に繋がったと言われている。今回は以前の政策を反面教師にして、低金利政策を強く推し進めているということになる。今回相場を下押しした原因は、新型コロナウィルスからの第二波懸念、それによる消費活動の低迷、米中貿易摩擦懸念、また米国での白人警官による黒人への暴行に反対する市民運動等あるが、冷静に考えてみると予想の範囲内の事柄が多い。米国内の人種差別等の問題もいつものことで、過去を振り返っても通常は時間が解決してくれることであり、経済への影響は限定的だと思われる。トランプ大統領は、11月の大統領選挙に勝利するのが第一目的で動いているのが明白であり、そのために中国にこれ以上プレッシャーを掛けることも控えるはず、なぜならば貿易摩擦の進展は株価の下落に繋がるからだ。理由は明白だと思われるが、詳しく説明すると、第二次世界大戦後に大統領選挙の再選へ臨んだ現職大統領10人のうち、敗れたのは3人だけであり、1976年のフォード(共和党)、1980年のカーター(民主党)と1992年のブッシュ(父)であった。いずれも1期目の4年間で景気を上げられなかったことが敗因だと言われています。株価の下落もありましたが、全般景気後退が明白となったことが原因のようです。とにかくトランプ大統領にとっては、株価も含め、直近の経済立て直しが緊急課題であり、そのために追加の100兆円規模の新たなインフラを中心とした経済対策を議会に求めていく方向で動いているようです。

ただ最近の傾向から、米国内では第二波の懸念が高まっており、専門家の中では年内にそれが起きることは避けられないとさえ言う者さえ出ています。世界最大の時価総額を持つ米国のアップルは、金曜日に感染者の再拡大を受けて、4州の11店舗を再び閉鎖すると発表して市場の懸念が拡大し株価は下落した。逆に安全資産の金価格は急上昇し、前日比で約20ドルの上昇となった。米国大手証券会社のゴールドマンサックスは、金の価格を以前の目標値設定から高く設定変更したことも上昇のサポート役となった。レポートによると、3か月後に1600ドル、半年後に1800ドル、12か月後の目標値は2000ドルと以前より200ドルずつ引き上げている。ここ一か月ほど高値からの調整となっていたが、最高値まで数ドルに迫っており更新するのは時間の問題となってきた。5月の高値は1765ドルで、上に抜けると次のターゲットは2011年市場最高値の1920ドルまで抵抗ラインが見当たらない。強いて言えば、1800ドルや1900ドルという数値からの節目くらいであろうか。世界的な低金利政策でマネタリーベースが大きく増加している今(*前回のレポートを参照)、新型コロナウィルスのワクチンが開発されるまでの間は、金の上昇を止める理由はあまり見当たりそうにもない。相場に絶対はないので、下がった時のイメージとして、1650ドル割れの場面があると上昇するにももう少しの日柄調整は必要で、一旦1600試しの可能性が大きくなりそうだ。高値を抜いていくのも一日で抜いた後、直ぐ下げてしまうと騙しの可能性もあり、この際の判断は難しい。2日以上高値を更新すると確実性が上がると思っている。

外国為替では、先々週後半からドルが反発し始めており、ドル指数は先週一貫して上昇しています。FOMCでマイナス金利を導入しなかったことがショート筋の買戻し中心でドル上昇に繋がっているようです。しかし円相場からみると、全般円高基調となり、クロス円を中心に下げています。株価はやや上昇していても円高となりました。それというのも、米国通商代表部のライトハイザーが日米貿易交渉第二弾を数か月以内にも始めたいと言及したことによるものだと考えています。やはり貿易交渉がテーブルに上ってくると、米国に対しては輸出高比率の多い日本企業ですから、今までの経緯からも円高を想像させることに繋がりやすいので、この材料には今後注意していく必要がありそうです。

その円相場ですが、ドル円の下落は大きくありませんが、クロス円の動きは比較的大きくなっています。クロス円の中でも一番売買高が多いのがユーロ円であり、個人的な見方では20082月からの下落は終了したと考えており、今年の5月安値114.37円を底に上昇が最初の第1波動の最中にあると捉えている。第1波動の中でも、最初の小波動である上昇が6月初旬の124.42円で終り、現在は調整時期とみなしている。一つのターゲットとしては、直近50%戻しの119.30円付近。先週このラインを若干下回ったが、底を見極めるタイミングであり、118.20119.30の間で底入れの可能性を考えている。急ではないが、そこからじりじりと上昇する展開を予想している。もし新型コロナウィルスからの第二波が鮮明となり、再度ロックダウンの国々が増えればリスクオフで株価下落の影響を受け、下値は116円前半までの可能性は残るのは致し方ないと思われる。

今週注目されるイベントとしては、まず火曜日に欧米各国の6月PMI指数の発表がある。先月予想をほぼ上回った結果と同様に今月も改善傾向にあるのかに注目。木曜日には米国1-3月期のGDP発表があり、金曜日には6月のミシガン大学消費者態度指数が控える。これらの経済指標が好転となれば、堅調な米国ナスダック指数だけでなく高値でもみ合っているダウ平均の上昇も見込まれそうで、ダウ平均が上昇となれば、次第にクロス円へ買いが波及すると考えている。

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