6月第1週の相場展望
2020-06-01
先週は、ユーロ圏の5月景況感指数が予想をやや下回ったが、同じユーロ圏やフランス国内の消費者信頼感がほぼ予想通り。27日のEU首脳会談への期待があって、株価は続伸、ユーロも買われる展開から始まった。EU首脳会談は、市場の期待通り、新型コロナ支援で、7500億ユーロの支援額で合意はほぼ決定。内訳は、5000億が助成金、2500億が融資に充てられる予定。さらに、以前から噂のあった共同債の発行まで協議する模様である。共同債は長年反対の声が多く、今回も北欧諸国からは、北欧が南欧諸国の借金を一部負うことになることで財政規律に基づく反対意見が出ており、現実化するかは疑問となっている。しかし、経済対策の規模の大きさが欧州市場へのサポート役となっており、ECBのラガルド総裁も今年の欧州経済は、以前予想していた落ち込みより悪化し8~12%の縮小と言及があったため、中銀からの更なる金融緩和の方向が示されているため、株価やユーロへのサポートとなりやすい。
ユーロドルは、EU首脳会談の結果を受けて上昇継続、200日移動平均線を上回り、4月高値の1.1018をも越えてやや加速した上昇を見せている。今年3月高値の1.1495から同月安値1.0637までの61.8%戻しレベルが1.1166付近で、一旦は直近の上昇ターゲットと見なされよう。相対的にドルが弱い訳ではなく、ユーロ単体の理由で上昇しているためこのレベルを超えるかどうかは上昇の強さを図る指標となるが、調整売りを示唆している指標も幾つか出ており、ある程度売り方の抵抗に遭うだろう。ここをしっかり上抜けすれば、1.13台が見えてくるが、このレベルを捉えるには時間が掛かると考えている。今週木曜日にECB定例理事会があり金融政策を発表する。金利自体の調整はない予定であるから、その後のラガルド総裁の発言に注目が集まる。既に市場は、ある程度の会見内容を予想しておりユーロ相場にも織り込みつつあることで、その前後での買い方の利食いが出る可能性もある。経済対策や金融政策で新たな手法や、ロックダウン解除以降の経済運営に前向きな会見がなされるのか、また実質的なEUコロナ復興基金設立に対しても発言があるかも注目点となる。
中国全人代で香港国家安全法の成立に対して、米国政府側から反対発言が多く、米中対立激化へ警戒感が高まっている。リスクのバランスで見ていくと、各国が新型コロナウィルス対応のロックダウンなどを解除する国が増えており、経済運営に関しては消費の戻りを期待していること、ロックダウン解除はあるにせよ一時的に落ち込んだ企業業績や雇用者の収入減を補う経済対策や金融政策がリスクオン要因。対して、米中の対立や新型コロナウィルスの第二波への不安感がリスクオフとなっている。どちらの要因も存在しており、リスクバランスの持ち合いが現在の相場の立ち位置であろうか。株価は金融政策の効果が表れており、戻しからの過熱感も見られ、先週の後半はやや利食いも多く出たようだが、今週は上昇を継続できるのか注目の週であろう。米国では雇用統計の発表が週末控えており、予想が立てづらい中での雇用情勢が明確となるため、米国株価は結果によっては戻り高値を越える上昇を見せていく可能性もある。ナスダック指数は、史上最高値まであと200ドル程度まで迫っている。新型コロナの大きな悪影響があっても最高値を更新するとなると、コロナでの巣ごもり消費やテレワークからのIT活用はあるが、何といってもFRBの金融政策からの影響が大きいことが証明され、他の国の株価上昇にも拍車が掛りやすい。今回の新型コロナが市場への過剰流動性が高まる結果となり、今後のバブル形成の礎となってしまうのか心配は尽きない。ただ短期では、先週あたりから株式指数の変動率が上昇しており、一日の値幅が大きくなりやすく、一時的に大きく上下動する可能性が大きくなっている。株価インデックス売買の際は、変動率(ボラティリティー)の上昇を頭に隅に置いて取引していただきたいと思っている。また世界の株価上昇に連動して、リスクオン商品であるクロス円は、ユーロ円や豪ドル円を中心に上昇を継続している。日本の生保や年金の運用なども、日本株以外にも海外株のシェアーを上げたため、それに絡む円売りヘッジの動きも多く、株価と同調するクロス円はドル通貨よりは動きは出やすいだろう。ドルに関しては、米国内の人種差別の問題他、ドル高を謳っているトランプ大統領の支持率低下がドル安要因となりそうで、全般ドルは下げ基調。今週に至っては、ドル安に分がありそうで、ポンドや豪ドルなども対ドルで上昇しやすい傾向は続きそうだ。
米国雇用統計やECB金融政策理事会以外では、米国で5月ISM製造業景況指数や同じくISM非製造業景況指数。オーストラリア中銀は2日(火)に政策金利の発表があり、欧州では景況指数(PMI)の改定値に注目したい。