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5月第3週の相場展望

2020-05-18

米国のトランプ大統領が中国との貿易摩擦について強硬な言動をし始めたことから、若干のリスクオフでドル高基調が目立っている。欧州やオセアニア各国の経済指標も低迷しており、コロナウィルスを防ぐためのロックダウンから徐々に緩和した動きが出てはいるが、今後の第2破の懸念もあるため、その政策を積極的に歓迎している市場関係者が多いような感じはしない。まだ対応するワクチンが出来ていないため、それまでは緩和の指示があっても人々がコロナ以前のように安心感が戻り、完全な企業活動に至るまでには時間が掛りそうだ。

現在既存している抗ウイルス薬は幾つかあるが、症状を抑えることはできても制限等あり、完全には抑え込めないでいる。通常、臨床試験としは3つのステップに分かれており、まずワクチン完成までにはボランティアーを被験者とした治験(フェーズ1)で3ケ月、抗体が出来た後のデータ収集に半年程度(フェーズ2)、実際に患者を集めてワクチン投与の結果まで半年以上(フェーズ3)かかり、完成までにはその後のデータ解析等を入れて最低2年半掛ると見積もられている。但し、今回は世界規模で対策が急がれているため、若干短くはありそうだが、それでも2年近くは掛ると考えられている。ワクチン完成を待つのではなく、人々の不安感を大きく減少させるのは、満足できる抗ウイルス薬が出来た時ではないだろうか。数年後にはインフルエンザのように、コロナワクチン接種が毎年のように知らされるだろうし、国の補助がつくもので、多くの国民が接種するとなれば薬品会社や各国も相当なお金を継ぎこんでいくだろうから、2年を待たずに完成する可能性もある。しかし、ほとんどの人々が接種できるワクチンとなるので、副作用がなきよう承認まで時間が掛かってしまうのは致し方ないだろう。

相場に話を戻そう。このところ全般に円が若干強めなのは、日本が他国と比較して感染者や死亡者が比較的抑えられているからだ。円高の中でもドルもやや強めなためドル円は持ち合いで小動き、他のクロス円は全般軟調推移となっている。日本の輸出企業は欧州で物を売ってもドル決済が多数なため、ユーロ円が下落してもユーロ建てで決済する企業はあっても損失を回避出来る企業が多く、クロス円の下げからは難を逃れることが出来ていると考えている。コロナウィルスが経済全般に与える悪影響を鑑み、各企業は、外貨決済の割合をユーロ建てからドル建てへと重きを変更させていると思われるからだ。その結果、225社の株価を指数化していて、多くの輸出企業が占めている日経平均は2万円へと値を戻した。週末には2万円割れとなっているが、経済の低迷さから鑑みると相当割高と思われるほど値を戻した感じがしている。日銀もまた年間6兆円の株価ETF買いを12兆に倍増しているわけで、毎月1兆円の平均買い入れ額となる。4月の買い入れ額は日額1200億円ほどで、10日間の買い入れを実行している。平均の売買代金が一日3兆円ほどなので、買い入れる日は4%程度の割合だが、買い入れ対象のETFは日経平均やTOPIXなどに採用される主要企業が多いことで、実質で指数に与えるインパクトとしては10-20%程度あるのではないか。株価指数の買い支え効果は大きく、売買の40%程度を占める外国人投資家もそのタイミングを研究し、日銀の動きを見計らいながら短期売買へ動いていると思われる。それには先物とオプションは欠かせないが、その話をしてしまうと難しくなるので割愛する。中長期では官製相場は嫌がっても、短期ではこのような利ザヤ稼ぎを継続している。アベノミクスが始まって以来、大きな変動率の中短期売買を行っていた外国人投資家は、傾向として私が個人的に掴んだものとして、時間足RSIの50%を上にブレイクすると買いが速まり、下にブレイクすると売りというふうに、トレンドフォローの動きが多かったようだが、今は変わってきている。現在どの指標を使用すれば相場の流れに乗っていけるのかは、まだ捉えていない。5月に入ってはゴールデンウィークがあり、買い入れは先週までまだ4日のみで残り2週間で6日の買い入れが予想される。米中の貿易摩擦懸念が残る中、急激な戻り高値を付け反落し、テクニカルからも過熱感が台頭していたこともあり、短期の利食い程度で下げたとしてもある程度下値ではサポートされそう。

現在、世界の株は、グーグル、アップルを始めとした米国のIT巨大企業から構成されているナスダック指数が堅調で、コロナウィルス問題で下落したあとの戻し相場を高値まで追っていくような強い動きで牽引役となっている。そのナスダック指数は、コロナ前の史上最高値から先月の直近安値の76.4%という最終戻しターゲットを達成し、最高値を狙える位置取りとなっている。自宅での仕事など、通勤時間の無駄を削り安全面から仕事を進める手法として必要となってきたテレワーク。また官庁や教育の現場でも、インターネットを使用した動きが必須の社会生活という方向が出ている今、ネットワークやソフトウェアーを開発、保守、販促などするハイテク企業が多く占めるナスダック指数が相場の上昇をリードするのは理にかなっている。それでも米国は、トランプ政権となって以降、相場の中でも特に株式市場はテクニカルから騙しの多いチャート形状が多くみられている。それもトランプ大統領の急な方向転換や他国に対しての強硬発言や態度が要因となっていることが多い。今後のナスダック指数の動きは常に注目しながら、リスクの方向性や他のインデックス指数の参考にしていきたいところ。テクニカルインディケーターから見ていくと、日足のボリンジャーバンド±σ2(シグマ2)を越えると上値が重くなる展開が続いており、売買する際に参考にしても良いだろう。

先週、通常より比較的少なめだった経済指標発表では、米国の5月ニューヨーク連銀製造業指数とミシガン大学消費者信頼感指数が予想ほど悪化せず、金曜日の相場の下支え役となり、ダウ平均やナスダック平均は、一時マイナス1.5%程度下げていたが経済指標発表後に戻している。今週も株式市場は経済指標の結果を睨んでの動きとなるだろう。

今週は、米国、オーストラリア、欧州と前回の金融政策の議事録が発表される。米国は、トランプ大統領がドル高歓迎の発言をしている中で、FRBパウエル議長の発言機会があり、マイナス金利への言及が注目されている。オーストラリアは、中銀がプラス金利維持への方向性が強く出ており、現状の経済活動停止の影響見極めのタイミングとなっているようだ。またECBや英国などの金利政策への動きに違いがでる可能性で、豪ドルは比較的底堅い展開を予想している。ドル円の底堅さと相まって、タイミング次第で豪ドル円の買いは良いかもしれない。そのほか、欧米などで5月PMI(景況感指数)の発表が多く、直近の景気動向を読み取る指数として注目に値する。

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