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5月第2週の相場展望

2020-05-11

日本では、ゴールデンウィークの間に緊急事態宣言が延長された。逆にEU諸国は制限緩和をゆっくりとだが進めているようだ、英国もジョンソン首相がロックダウンの緩和に動くと議会で明言した。コロナウィルス感染者が一番多い米国でも、緩和への動きが出始めてきている。また中国は早々と緩和的へ舵を切っている。感染者が増加した割合と連動して解除へと向かっているようだが、実は中央銀行の対応の早さの順番で解除へと動いているようだ。中国は政府主導での制限が早かった、その後はまず米国のFRBが緊急利下げを行い、ECBも定例会合の時に量的緩和へと動いている。その後FRBの2度目の利下げの際、協調行動として日銀は金融緩和となった。株価は世界各国で、同じように一時の大きな暴落から持ち直しつつあるが、コロナウィルスの解除時期はまちまちとなっている。解除のタイミングはどの時点が最適なのかは予想はなかなか難しく、今後のコロナウィルス感染者数の動きを捉えていくしかない。そういったまちまちの動きから為替相場は、先行きがなかなか見通せず、小動きの展開が継続している。現状は、雇用や企業活動の低迷が継続しており、現在の株価の戻しにはやや違和感がある。各国が緩和へと舵を切る前に、先取りしていた株価は緩和で経済活動がある程度戻ってきても、先取りのまた先を睨んでの高値が思いながら、方向性を探る展開を予想している。今回の世界の株価の動きは、1987年のブラックマンデーに似ているというアナリスト達の多数意見に一応沿ってはいるが、2番底リスクもまだまだ大きいのではないかと感じている。株主に気を使い、企業業績の見通しが甘めに出ている統計上、もしスペイン風邪のような大きな2度の流行があると、各国の金融政策にインパクトを与えるような余裕幅がないために、2番底以上の落ち込みの可能性をも鑑みなければならなくなってくるのではないかと不安は残ったままです。

しかし、ここ2週間ほどは予想を大きく下回る指標は減ってきており、それは予想が経済指標の大幅悪化を織り込む形で、既に大きなマイナスを見込んでいるためだ。先週のPMI改定値や小売り等の指標も予想程度の落ち込みで済んでおり、市場関係者の読み通りであるため、金融市場にはある程度の安心感が戻ってきている。金曜日の米国雇用統計でも、失業率の予想18%に対して結果は13%、非農業雇用者数推移でも予想がマイナス2100万人と思い切った悪化予想に対して、結果は2030万人程度と予想ほど悪化せずということとなった。これを受けて米国株式市場はメジャーな3市場共に大きく上昇し、金曜日は約2%の上昇で終わっている。この安心感が、為替市場にも伝わっているようで、円高は一服、ドル相場ももみ合いで推移となっている。

今は持ち合いの展開が継続しているようだ。FRBの執拗な金融緩和で利回りが低下し、日米間の利回り差が縮小している。それが106円前後とややドル円としては円高気味の水準として表れている。日銀としては、利回りは既に短期ではマイナスとなっているため、これ以上そこへのサポートは無意味となる。したがって、株や債券を買うしかなくなる。この額を増やせば、完全に官製相場の割合が大きくなる。欧米の投資家は、自由度が大きい、市場が値段を決める株価に投資することが前提で、それが経済や企業活動を図る物差しとしてみている外国人投資家にとっては、投資理論が役立たない歪のある相場となるため、退場してしまう恐れも大きい。官製相場となると、今までの理論的な動きに反することが増えてくるため、売買を仕掛けづらくなってしまうためだ。しかしどちらにせよ、今後は政策面からみるとこれ以上深堀する余裕はないと思っている。

欧米各国がコロナから立ち上がり、本当に経済が再開するような動きが顕著にみられると、FRBECB(欧州中央銀行)とBOE(英国中央銀行)は少し金利を上げて次の危機のためにバッファをもたせたいという思惑から、早く引き締め方向へと動き出したいはず。それを先取りして市場は国債を売り、市場金利が上昇することになる。4月末の米国連邦銀行理事会であるFOMCでは、政策金利は維持とした。その後の会見でパウエル総裁は、追加利下げの可能性には言及しておらず、その後のFRB委員の面々の更なる追加緩和へのコメントは見当たらず、米国では現状が金利の下限と思われる。一方日銀は、株のETF買いと債券の買いを減少させることから始め、既にマイナス金利であってこれ以上の金利操作の可能性は難しく、米国と違ってデフレ脱却の看板があるため簡単に利上げには動けない。今が金利差としては、最小に近いと思われる。今後、完全な経済活動再開後は、日米金利差拡大を見込んだドル円への買いが再開される可能性を考えている。

金融緩和からの官製相場の関係もあるが、現在はまだ実質コロナウィルスの影響を受けて、海外マネーが自国へ戻っている公算が大きい。原油価格の急落もオイルマネーの自国還流で、まず国内立て直しが最優先だ。外資の影響が限定され、巨大なマネーで売買されている外国為替相場は、巣ごもりの個人以外の商いが減り動きも限定されている。コロナ解除がほぼ世界的な動きとなるまでは、小動きは継続されよう。

今週は、欧州、米国、ドイツの1-3月GDP発表が控える。中国では4月の鉱工業生産指数と小売売上高の発表がある。また金曜日には、コロナウィルスの影響から一番立ち上がりの早かった中国のこれらの指数は、最近買われている豪ドルへ影響を及ぼすと思われる。AUDUSDは、中国経済の立ち上がりの早さが影響して、3月の中旬から大きな上昇を見せている。昨年末高値の0.7031から今年3月安値である0.5507の下落幅の、61.8%戻しを達成し、76.4%戻しの0.6670を目指している。現在は0.65の半ばであり、木曜日までに堅調基調が続けば、中国の経済指標前に一旦利食いが出ると考えており、為替通貨ペアの中では比較的動きが出やすいのではないかと思っている。しかしこれらの経済指標や木曜に発表されるオーストラリアの失業率の結果次第では、ターゲットを捉える可能性も残っており、達成すれば昨年高値が次のターゲットとなりそう。

金相場は、各国がコロナウィルスの悪影響から脱却の動きが出始め、各国中銀のサポートで安心感が台頭している株式市場の上昇をみていると、上値が重くなる公算もある。現在は上昇中の25日移動平均線にタッチしているところで、1700ドルをきっちり割り込むと上値が重くなると考える。1658ドルを下回ると調整局面に入りそうだ。

全般、このところの外国為替の通貨価値は、金利の動きにはあまり同調せず、経済活動の低迷から如何に回復するのかが市場のテーマとなっていることで、利下げで経済に好影響を及ぼしそうな国の通貨は買われ、そうでなければ売られるという、通貨国の経済力と連動しているように思える。現在は、金利の動きと為替の連動性は非常に薄いものとなっており市場は常に理論で動くのではなく、外国為替独特のテクニカル、というか今は注目テーマに対しての評価次第での動き、ということを頭に置いておく必要がありそうだ。
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