日銀:金融政策決定会合レビュー
2023-01-20
■ 日銀は共通担保資金供給オペの拡充を決定したが、その効果は未知数だろう
■ 物価や日本国債市場の状況を背景として、早期に日銀の政策修正観測は後退しないと考える
1月17、18日に開催された日銀の金融政策決定会合(以下、政策会合)では、政策修正につながる決定は行わず、共通担保資金供給オペの拡充などにとどまった。日銀の発表を受けて金融市場はいったん株高・金利上昇・円安で反応したものの、短期筋の間で積み上がっていた政策修正を見込んだポジションの解消が表面化した動きにすぎないと解釈している。
共通担保資金供給オペの拡充は柔軟性を持たせるための決定だが、それでも、実際の日本国債市場に対する影響は今後の日銀の行動次第であり、その効果は未知数だろう。同オペのポイントは「適用金利」と「貸付期間」の2点とみる。適用金利を従来のゼロ%固定から「市場実勢を踏まえて貸し出しの都度決める」(金利入札)方式に変更したうえ、最長貸付期間を10年までで一本化した。日銀は早速、過去最長となる期間5年での同オペ実施を23日からと予告しており、まずはその応札状況を見極めたい。日銀は直接の国債買い入れではないが機動的に同オペを活用し、イールドカーブの歪みを修正していく狙いがあるのだろう。
ただし、金融市場と日銀の間で政策修正を巡る攻防は、今後も断続的に観測されると予想する。黒田日銀総裁の記者会見を含めて、今回の日銀による情報発信を踏まえても日本国債市場の不透明感は払しょくできないとみるためだ。ポイントは2点あり、(1)日本の物価を巡る動向と、(2)日銀による国債補完供給オペの応札・落札額の積み上がり、に注目したい。
(1)は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2024年度の物価見通しは日銀の目標水準(前年比2%上昇)に到達しないことが改めて示された。対して、20日に公表される昨年10-12月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品除くコアが前年比4.0%上昇と、日銀目標の2倍の伸びに達する見込み。物価上昇に由来する金利上昇圧力は弱まりにくいだろう。
(2)は主に証券会社が日銀から国債の特定銘柄を借りるためのオペだが、17日と18日には応札・落札額が8兆円超まで膨らみ、日本国債市場は流動性低下が危惧されている。国債補完供給オペの応札・落札額の減少傾向が継続するまで、市場機能の復元は未達との解釈は広がりやすいだろう。早期に日銀の政策修正観測は後退しないと考える。