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5月第1週の相場展望

2020-05-04

先週は、日、米、欧、各国中銀による金利政策が発表され、コロナウィルスの悪影響に対する景況感へのコメント及びそれに対処する金融政策の方向性が示された。各国中銀の大きなイベントに向けてのポジション取りとイベント後の決済と短期相場の動きが続いていて、コロナウィルスの影響が明確になるにはもう少し時間が掛りそうだ。思惑に対してポジションを取り始め、結果後にクローズする展開、いわゆる「噂で買って結果で売る」という展開はコロナの不透明さと同じで数か月は続くであろう。

米国FOMCでは、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う景気悪化を受け、事実上のゼロ金利を長期間維持するとした。失業者が元に戻るには相当時間が掛かかると言明し、景気を下支えするのにあらゆる措置を講じると表明した。FRBは、各国中銀の先頭を切って、素早く量的金融緩和の再開を決定し、企業間資金への緊急供給制度や相場の下支え役となっている。このイベントまでは株式相場は戻し優勢で上昇していったが、翌日からは下落に転じている。ここに向けて株を買っていた短期筋が数週間前からのポジションをクローズしていると思われる。最後のECB後に下落に転じたことが証となろう。

為替相場では、各国の政策の方向性に対してのポジション取りが行われたと感じている。日銀が国債買い入れの上限を撤廃することで金利上昇を抑え、社債の購入枠拡大で企業の資金繰りをサポートする形を打ち出した。まず予想通りの結果から、やや円高へと動いていった。翌日ECBの金融政策は、この中でも最も注目されており、新型コロナ問題に対しては、主要国がロックダウンのような厳しめの措置を講じていただけに、ECBがどのような情勢判断をするのか関心が集まっていた。そこでECBラガルド総裁は、第一四半期以上に第2四半期は大きく景気が減速し、経済面で深刻な影響が生じるとの見方を示した。また原油価格の暴落で、物価への低下圧力が強まると懸念を示していたが、短期資金の流動性を増していき、一時的な企業や家計へ負担を減らす方向性は頷けるが、資産買い入れ額を据え置きとしたのが期待外れであったようで、株価が下落した。キャッシュマネーの増加とはならず、短期でショートに振っていた筋の買戻しがあり、ユーロが反転上昇することとなった。欧州域内では、感染者の伸び率がやや減少傾向にあったため、ここ2週間ほどユーロは上昇してもよかったが、実はこのイベントに期待して売りをしていた投資家が多かったことを示している。為替も株式相場も、コロナウィルスの影響推移より各国中銀のスタンス次第での動きを決めているようだ。それだけ、先行きが読めない問題と認識できる。

先月の理事会で導入した新たな資産購入プログラムは、約89兆円相当であるため、インパクトは大きく、今回はその詳細が発表される可能性があっただけに、やきもきしてしまう専門家も多いだろう。ECBラガルド総裁は、フランス人で10年近く世界国際通貨基金であるIMFのトップを努めており、各国のバランス感覚には優れてもトップダウンの決断には時間がかかってしまうのは致し方がない。欧州各国は、現在の経済情勢やコロナウィルスの影響の差があるため、ECBは各国との調整や比率決定までデータ解析や交渉など慎重に進める必要があり、他国に比べ時間が掛ってしまうのではないかと推測する。ここに多国圏というユーロ圏の問題が表面化してしまう。ユーロは対ドルの受け皿としては機能しているが、現在のスキームではドルを凌ぐことは難儀である。問題が多国間に及ぶほど、その複雑さからスピード感では米国や中国に劣ってしまっており、ドルに対しては、長期的に10年以上下落トレンドが継続する結果となっている。英国の離脱もあり、何らかの共通の強い枠組みが出来なければ通貨ユーロの低迷は継続していくと考えている。

米国のGDPが年率でマイナス4.8%と悪化の度合いが大きかったが、ISM製造業指数は意外と予想を上回っている。製造業はそれほど落ち込みを見せないだろうという憶測だが、油断はできない状況は続く。先週木曜日から株価が下落し始め、米国ダウ平均は金曜日に700ドル強安く、月曜日の早朝には先物で既に金曜日の終値から約300ドル下落している。トランプ大統領が中国との通商交渉を後ずらしにするような発言があったためだ。テクニカルでも半値戻しを越えたところから大きく下落となったことで、一旦高値となる公算が大きく今週の株価の動きには注意する必要がありそうだ。各国先進国の金融政策委員会を通過したことで、好材料出尽くし感が台頭しており、それに悪材料が出てくるとなれば、テクニカルで上値の重さを確認したところだけに、下振れの可能性もありそう。

今週は、前半日本と中国の休場が多く、アジア時間の動きは限定的となろう。欧州の経済指標はPMI景気指数が幾つかあるが改定値なので、影響は少ない。米国は月曜日のISM非製造業指数と金曜日の雇用統計発表が重要となろう。4月の失業率などがどれだけ落ち込んでいるのかで、現状の部分的だか経済情勢を把握する指数となりそう。FRBも雇用と物価には責任があると明確にしているため、各地域の連銀総裁などからは、雇用の大きな落ち込みにはなんらかの言及をする可能性もあるだろう。また木曜日には、英国中銀の金利政策会合があり、記者会見では、英国中銀総裁となったばかりのベイリー新総裁がどのような発言をするのか注目したい。ベイリー新総裁は、就任早々の3月に緊急に政策金利を0.15%下げ、量的緩和プログラムを拡大している。4月22日のコメントでは、「早期のロックダウン解除には注意が必要」「ロックダウン解除後の再適用は経済に一段と打撃を与える」と言及しており、コロナウィルスへの対応としては米国FRBと似たような救済へ積極的なニュアンスが感じ取れる。ポンドドルは、この新総裁の緊急利下げを機に上昇しており、1.2650付近で2度高値として止められており、ここを更に上に抜けるのか重要なレベルであろう。ユーロポンドも先月安値を2度つけたダブルボトム完成まであと80ポイントほどで、完成すれば上昇に弾みがつく可能性を示唆している。

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