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日本マクロ経済見通し

2023-01-10

■ 外需の勢いは鈍化しつつあるが、政策支援に支えられ、内需は底堅く推移
■ 突然の政策調整により、日銀の政策正常化観測が高まる

   日本では、世界的な景気減速の影響で外需回復の勢いは鈍化し、鉱工業生産(10月:前月比3.2%減)が伸び悩んでいる。また、悪性インフレ進行を受けて家計の実質所得の減少基調は強まっているものの、政府の全国旅行支援により、繰り延べられてきた需要が喚起されるとともに、観光業および関連産業が復調し、需要面で計測すると内需は底堅さを保っている。
   日銀短観12月調査の業況判断DI・現況指数は、大企業・製造業(現況:7、先行き6)が4四半期連続で低下し、大企業・非製造業(現況:19、先行き11)が大幅上昇となった。先行き指数は、大企業・製造業、非製造業ともに現況指数から低下し、慎重な見通しが示されている。10月の景気動向指数は、先行CI(前月比0.4ポイント上昇)が趨勢的に低下するなかで、一致CI(同1.2ポイント低下)が2カ月連続で低下し、景気拡大の勢いが鈍りつつあることが示唆される。家計の実質所得が趨勢的に減少傾向にあるなかでも、10月28日に閣議決定された総合経済対策により、当面は実質所得減少の緩和とともに、景気が下支えされることが想定される。
    11月の全国消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI:前年比3.7%上昇)は上昇ペースが一段と加速し、1980年代前半以来の大幅上昇が続いている。食料などへの価格転嫁が進み、当面は高インフレ継続が見込まれる。日銀は19、20日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用見直しを決定。上下0.5%程度へ長期金利の変動幅を拡大するとともに、急激な変動を抑制するため国債買い入れを月額9.0兆円程度へ増額する。長短金利差拡大により、マイナス金利脱却などの政策正常化を進めていく余地が広がったと考えられる。2023年1月に「経済・物価情勢の展望」が更新され、物価見通しが引き上げられる場合、政策修正観測は一段と高まろう。
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