日銀は日本国債市場への介入を一段と強化したが
2023-01-09
■ 昨年12月以降、日銀は中期債(2・5年)の国債利回り上昇を封じ込める意図を明確にした
■ 新たな措置は、かえって海外投資家を中心とする市場と日銀の対立を煽る可能性もある
本稿では、円債市場の視点から日銀の動きを確認する。昨年12月に開催された日銀金融政策決定会合では、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)での長期金利の変動許容幅を「0%を中心とした上下0.50%」へ拡大した。それは市場機能の復元を狙ったものと指摘されたが、現時点で日銀は日本国債市場への介入を一段と強化している。
特徴的な措置は2点ある。(1)中期債(2・5年)、超長期債の無制限指し値オペを導入、(2)1月4、5日に共通担保資金供給オペを「2年間・貸付利率ゼロ%」で実施、だ。これらの措置導入で、日銀は特に中期債(2・5年)の金利上昇を避けたい意図を明確にしたと解釈している。
(1)では、最新の実施日(1月4日)で、2年物444回債を「0.030%」、5年物154回債を「0.230%」で、それぞれ無制限指し値オペを実施した。一方、初回実施日(昨年12月20日)では前者が「0.020%」、後者が「0.170%」だった。オペの目標水準を市場実勢に合わせて適宜修正しており、これらの指し値水準自体は、日銀の想定する「歪みのないイールドカーブ」を示すとはいえないとみる。ただし、超長期債に比べて、中期債(2・5年)のオペ実施が頻繁なことから、中期ゾーンの国債利回り上昇を抑えたい日銀の意図がうかがえよう。
(2)では、「2年間・貸付利率ゼロ%」がそのまま、2年国債の利回り上昇を封じ込めたい意図を示す。利付国債は表面利率がプラスのため、市場で残存期間2年までのプラス利回りの利付国債を買い、そのまま日銀に担保として預けて貸付利率ゼロ%の同オペで資金を借りれば、経済効果はプラスになるためだ。また、従来の共通担保資金供給オペの最長期間は2013年4月に実施された「1年間」だったことを鑑みると、今回の措置が円債市場へ与えるアナウンスメント効果は大きいとみる。直近の中期(2・5年)の利付国債利回りは早期利上げを織り込む水準であり、日銀としては市場参加者の早期利上げ観測を抑えたい意図が感じられる。
今後も折に触れて、上記2つに類するオペは実施される可能性が高いと予想する。ただし、これらの措置はかえって市場との対立を煽ってしまう可能性もあろう。日銀の政策正常化を巡って、今年も海外投資家を中心とする市場と日銀との攻防は続くのではないか。