ユーロ圏経済見通し
2023-01-05
■7‐9月期までは内需が底堅さを保つが、10-12月期にはマイナス成長へ転落する可能性が高い
■エネルギー主導でのインフレ加速には歯止め、ただし金融引き締め継続の方針は変わらず
ユーロ圏では、7-9月期の実質GDP成長率(改定値、前期比0.3%)が2次速報値(同0.2%)から上方修正され、新たに開示された需要項目別の内訳では、輸入急増が成長率を押し下げた一方で、家計消費、固定資産投資は4-6月期から増勢を強めていることが示された。失業率(10月:6.5%)が統計開始以来最低水準で推移するなど労働市場は堅調で、2%超の賃金(7‐9月期:前年比2.1%増)増が続くなかで内需が支えられている。ただし、10月の小売売上高(前月比1.8%減)が2021年4月以来の低水準へ落ち込み、鉱工業生産(同2.0%減)が3カ月ぶりに大幅減少するなど、家計消費、生産は失速しつつある。また、ユーロコイン指数(11月:マイナス0.62)は3カ月連続、総合PMI(12月速報値:48.8)は6カ月連続で、それぞれ経済活動の拡大・縮小の基準を下回っており、10-12月期にマイナス成長へ転落する可能性は依然として高い。
11月の消費者物価指数(HICP、前年比10.1%上昇)は1年5カ月ぶりに前月から上昇ペースが鈍化した。天然ガス価格のピークアウトによりエネルギーが前月比で7カ月ぶりに下落に転じ、前年比でも、今後はベース効果により上昇圧力は徐々に緩和していくことが見込まれる。ただし、食品、工業製品への価格転嫁や賃金上昇が続いており、基調的なインフレ圧力は依然として強い。欧州中銀(ECB)は15日の理事会で0.50%の利上げを決定した。7月の利上げ着手後、初めて利上げ幅を縮小させたものの、次回も同ペースでの利上げを継続する方針が示された。マイナス成長への転落が見込まれるなかでも、中期的に2%のインフレ目標へ回帰させるため、十分に景気抑制的な水準まで政策金利を引き上げる必要性を主張している。