米金融市場:2023年のリスク要因を整理する
2022-12-30
■ インフレが落ち着き、FRBが利上げ停止に至る、との見方がコンセンサス
■ インフレ高止まりによる利上げ継続、短期間で急ピッチな利下げ、がリスク
2021年4月に始まったインフレ率の急上昇に関して、米連邦準備理事会(FRB)は当初一時的なものにとどまるとの見方を示していた。しかしながら、半導体などの供給制約、労働力の回復の鈍さ、ロシアのウクライナ侵攻による資源と穀物の供給減など、供給面の問題が積み重なり、米消費者物価指数は食品・エネルギーを除くコア指数が2022年9月に前年比6.6%上昇と1982年8月以来の伸びを示した。想定外のインフレ高騰に対し、FRBは異例の短期間で急ピッチな利上げを実施し、足元では供給制約の緩和や需要鈍化を背景に、財を中心にインフレが急速に落ち着きつつある。市場ではインフレの伸びが鈍化を続け、FRBは2023年前半にも利上げを停止する、との見方がコンセンサスとなっている。
こうした見方に反し、生産の停滞やサプライチェーンの途絶による供給制約で財インフレが再燃する、労働需給のひっ迫が続き賃金上昇に起因したサービスインフレが持続する、などインフレが高止まりすることとなれば、早期利下げ観測が後退し、年後半の株価上昇シナリオを修正する必要に迫られるだろう。中国で新型コロナウイルス規制が緩和されたことで感染者数が急増しているとされ、世界的に需要減退と供給不足に対する警戒感が強まり始めている。集団免疫獲得により問題が比較的短期間で解消に向かうか、変異株出現などにより経済活動制限が再開し問題が長期化するか、重要な岐路に立っている。
また、FRBによる利下げが求められるような深刻な需要減退(=景気後退)も想定外のリスクとなる。FRBはインフレ抑制のため、中立金利(2.50%)を大幅に上回る水準まで利上げを進めてきた。裏を返せば、景気刺激的な金融環境にするため中立金利を下回る水準まで政策金利を引き下げる必要が生じた場合、短期間で急ピッチな利下げが必要とされよう。この場合には、債券投資に強い追い風となるだろう。