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日本株:2023年の相場観

2022-12-23

■ 円安による企業業績の相対的底堅さは失われていく可能性

■ 日経平均はレンジ推移を想定、円高進行による下振れリスクを警戒


    今年は年初から世界的に大幅株安となるなか、日本株は相対的に下げ幅が限定されてきた。その背景には企業業績の底堅さが挙げられる。他国に比べて物価上昇圧力が低水準にとどまり、日銀が金融緩和姿勢を堅持してきたことから、景気悪化懸念は相対的に強まりにくい状況にあった。加えて、新型コロナ禍の行動制限からの経済再開が欧米より遅れたことで、主要国で景気の先行き不透明感が強まるなかで景気が上向いたことも好感された。また、大幅な円安進行に伴い主要輸出企業の業績が押し上げられたこともあり、企業業績見通しは世界的に下方修正が進むなかでも、日本では底堅く推移してきた。

    しかし、今後はこうした優位性が失われていく可能性がある。日銀は19、20日に開催した金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)における長期金利の変動許容幅に関して、従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大すると決定した。YCCにより10年国債利回りの上限を設定しているために事前に政策修正を織り込ませる過程で売りがかさみ、結果的に政策修正のタイミングでより大きな変動が生じるおそれがある。そのため、政策修正は市場の不意を衝く格好とならざるを得ず、こうした構造的な問題がYCCを撤廃するまで残存する。日銀は今回の政策変更を現行金融緩和策の出口に向けての動きではないことを強調しているが、来年3、4月の日銀総裁・副総裁の任期満了も相まって、市場では突然の政策修正により金利上昇・円高が生じ、大幅株安に至るとの懸念がくすぶり続けるだろう。

    TOPIXの向こう1年予想EPS成長率は今年初めの12%程度から足元では5.8%まで水準を切り下げてきている。インバウンド消費など日本特有の好材料が意識されようが、世界的に景気後退懸念が一段と強まれば、同成長率は急速に切り下がるおそれがある。新型コロナ禍からの経済再開の勢いや円安による業績押し上げ効果は時間の経過とともに弱まるとみられ、日本株の相対的な底堅さもそれにつれて失われていく可能性を認識しておきたい。日経平均は25000-28000円を中心としたレンジで高下する展開を想定し、円高進行による下振れリスクを警戒したい。

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