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メキシコ中銀レビュー:政策運営に自信を深める

2022-12-21

■ メキシコ中銀は政策金利を10.50%へ引き上げたが、利上げ打ち止めへ向けて順調に推移
■ メキシコを取り巻く環境はまだ予断を許さず、物価と経済を巡り、状況を注視する必要がある
    12月15日にメキシコ中銀は、今年最後の金融政策決定会合を開催した。政策金利は10.00%から10.50%に引き上げられ、昨年6月以降の累積利上げ幅は6.50%となった。票決は4対1の賛成多数だったが、反対のエスキベル副総裁は25bpsの利上げを提案。メキシコ中銀は、少なくともあと1回は利上げを実施する可能性があると示唆しており、来年前半にかけては追加利上げが実施される公算が大きい。本稿執筆時点の市場コンセンサスでは、利上げの最終到達点(ターミナルレート)は11.00%となっている。

    メキシコ中銀は今回、これまで4回連続で実施していた75bpsの利上げ幅を縮小した。11月の政策会合で近い将来の利上げサイクル終了を示唆していたが、順調な金融政策の調整と解釈している。11月の政策会合以降の情報発信を確認すると、11月30日にメキシコ中銀は、物価上昇率はすでにピークを付けた公算が大きいとした。また、12月6日にはこれまで利上げに積極的と目されていたヒース副総裁が、12月会合での利上げペース鈍化を示唆。その翌日に公表された金融安定報告書では、国内金融システムにとって新型コロナ禍で見られた脆弱性やリスクが弱まったと指摘していた。メキシコ中銀は、今後の政策運営について自信を深めている様子が見て取れる。投資家にとっては、安心材料と言えるだろう。

    ただし、来年前半にメキシコを巡る環境が大きく好転すると考えるのは、早計とみている。11月の消費者物価指数は、総合が前年比7.8%上昇と今年5月以降で最も小幅な伸びにとどまったものの、一部食品やエネルギーを除くコア指数は同8.51%と、中銀の目標レンジ(同2-4%)からは、なお乖離が大きい。また、12月1日には、企業経営者と労働者代表及び政府の間で来年の最低賃金20%引き上げを合意しており、一段の物価上昇につながる可能性もある。さらに、国連中南米カリブ経済委員会(ECLAC)が12月15日に発表した来年の経済成長率予測は、従来の2.9%から1.1%へ大きく下方修正された。隣国である米国景気の動向に振らされる展開は続くとみている。
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