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ブラジル:新政権と中銀の連携が決め手となろう

2022-12-15

■ ブラジル中銀は政策金利を据え置いたが、先行きのインフレ率上昇に対する警戒を維持
■ 10月末以降のブラジル市場は、新政権の財政政策運営に対する懸念が重しに

    ブラジル中銀(BCB)は12月7日に終了した金融政策委員会(COPOM)で、政策金利を3会合連続で13.75%へ据え置いた。ただし、声明で「委員会は今後の財政政策の動向と、特に資産価格やインフレ期待への影響などを注視」とし、財政政策を巡る不透明感がインフレ率上昇につながる可能性を指摘した。また、ネトBCB総裁は11月18日に、今後議会が可決する歳出計画次第で、BCBが利上げサイクルを再開する可能性にも言及している。BCBサイドからは、年明けよりスタートするルラ新政権に対する警戒感が強調されている点が印象的だ。


    また、金融市場でも同様にルラ新政権の財政政策運営への懸念に注目が集まるなか、逆風の材料と解釈されているようだ。10月末から12月13日までの間で確認すると、ボベスパ指数はマイナス10.8%。ブラジル10年国債利回りは一時13.88%まで上昇し、2016年4月以来の高水準をつける場面もあった。また、レアルも対米ドルで5.17レアル台後半から5.29レアル台前半へ、対円は28円台後半から25円台半ばへ、それぞれレアル安となっている。


    こうした懸念の背景は、2003年から2016年に政権を担当した左派によるバラマキ政策がその後の景気後退を深刻化させた実績への警戒感とみている。そして、この間の2003年から2011年は、ルラ次期大統領が政権を担当していた。12月9日に新政権の主要閣僚が発表され、市場の注目はいよいよ具体的な財政政策に移る。中南米地域の左派政権は伝統的に財政赤字体質であることから、金融市場やBCBの警戒姿勢は予想以上に長引く恐れもある。


    足元の経済指標は強弱まちまちな結果だが、現時点では大幅な景気後退は見込まれていない。8-10月の失業率は8.3%と2015年7月以来の最低水準となったほか、1-11月の貿易黒字は累計580億ドルと、前年同期(574億ドル)を上回る。一方、1-10月の経常赤字は累計440億ドルに達し、財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」が意識されやすい。また、7-9月期の実質GDPは前期比0.4%増と、市場予想(同0.7%増)を下回った。来年のブラジル市場を取り巻く環境が好転するか否かは、ルラ新政権と利下げを進めたいBCBの連携次第といえよう。BCBによる早期利下げが意識されれば、ブラジル市場の好転につながる見込み。
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