RBA理事会レビュー:利上げサイクルは継続へ
2022-12-09
■ RBAは政策金利を3.10%へ引き上げたうえ、今後の追加利上げを示唆
■ 市場の一部は来年前半の利上げサイクル停止を見込んでいたが、そうした見方は後退
豪中銀(RBA)は12月6日の理事会で、市場予想通り政策金利を25bps引き上げて3.10%とした。これで今年5月の利上げ開始以降、累計での政策金利引き上げ幅は3%となった。
市場の一部では、早ければ今会合で利上げサイクルが停止、もしくは来年前半の利上げサイクル停止を示唆するとの見方もあった。そうしたなか、理事会終了後に公表された声明では、前回に続いて追加利上げを示唆する文言(The Board expects to increase interest rates further over the period ahead)が確認されるなどして、利上げサイクルを巡る市場の見方は修正されている。また、「決まった道筋はない(it is not on a pre-set course)」と、RBAは柔軟性を確保する方針も改めて示した。
事前に早期の利上げサイクル停止の思惑が浮上していた背景は、直近に公表された経済指標にあった。10月の豪小売売上高は前月比0.2%減と、市場予想に反して10カ月ぶりのマイナスに転じ、物価高と金利上昇が個人消費に影響を及ぼし始めた点が確認された。加えて、10月の豪消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年比6.9%へ鈍化し、物価上昇がピークに達しつつあるとの見方が市場に広がった。ただし、7-9月期の賃金指数は前年比3.1%上昇で約10年ぶりの高い伸びとなり、賃金上昇の継続は示されていた。
こうした経済指標の結果を受けて、今回の声明では新たに今後の個人消費減速の見通し(Household spending is expected to slow over the period ahead)が示されている。一方、物価と賃金のスパイラル回避の重要性(Given the importance of avoiding a prices-wages spiral)にも言及。追加利上げ継続の背景の一つとみられる。以上から、11月理事会後よりも景気減速と物価上昇への警戒が高まったと解釈しており、RBAは来年2月の次回会合は、ある程度景気を犠牲にしてでも利上げを進める方針で臨むとみる。本稿執筆時点の短期金融市場では、来年7月にかけて3.6%付近まで利上げが進んだ後、2024年下期に利下げ開始との見方が織り込まれている。