日本経済:輸入急増により7‐9月期は3四半期ぶりのマイナス成長
2022-12-02
■ 生産、設備投資は先行きにかけて増勢を保つ見通し
■ 実質賃金が減少するなか、家計消費は上向かず
日本の7-9月期の実質GDP(1次速報値、前期比年率1.2%減)は3四半期ぶりに減少した。経済活動正常化が進み内需は堅調に推移したものの、円安、原燃料価格高騰、およびサービス輸入の大幅増などの一時的要因により輸入が急増し、成長が抑制された。また、実質国内総所得(GDI、同3.9%減)はコロナ禍以前の水準を大幅に下回り、物価上昇や交易条件悪化により、実質GDPとの乖離が拡大している。
鉱工業生産(10月速報値:前月比2.6%減)や民間設備投資の先行指標であるコア機械受注(船舶・電力を除く民需、9月:同4.6%減)は大幅減少した。ただ、製造工業生産予測指数では11月(同3.3%上昇)、12月(同2.4%上昇)には増産計画が示されており、コア機械受注も10‐12月期(前期比3.6%増加)に増加に転じることが見通されている。生産、設備投資は足元で伸び悩んでいるものの、先行きにかけては増勢を保つことが示唆されている。
家計消費では、物価変動が含まれる小売業販売額(10月:前月比0.2%増)の増加が続く一方で、物価の影響を含まない実質消費支出(2人以上世帯、9月:1.8%増)は横ばい圏での高下にとどまる。9月の実質賃金(前月比0.6%減)は3カ月連続で減少し、実質ベースで家計所得の目減りが続くなか、家計消費の基調は上向いていない。繰延需要の一巡後、家計は防衛的姿勢を徐々に強めることが懸念される。
10月の全国消費者物価指数(総合前年比3.7%上昇、生鮮食品除くコア同3.6%上昇)は上昇ペースが一段と加速した。多くの品目の値上げが実施された生鮮食品を除く食料がインフレ加速に寄与した。総合経済対策を閣議決定した政府、緩和的政策を堅持する日銀の姿勢には大きな変化はみられず、海外と対照的に財政・金融緩和政策を継続する方針が示されている。