SNB:スイス中銀は利上げペースと通貨介入に目配り
2022-11-30
■ スイス中銀は2会合連続で利上げを決定したが、12月会合は引き締めペースを緩める可能性
■ スイスフラン高は物価抑制に寄与するが、当面は過度なスイスフランの変動に目配りへ
中国政府の厳格なゼロコロナ政策に対する先週末の抗議行動を巡り、為替市場ではドル安に歯止めの兆しが表れるなか、円高と資源国通貨安が進行。一方、安全資産とされるスイスフラン(CHF)は騰勢を強めていた15日までの相場から一転、対円は0.9%安、対ドルや対ユーロでは0.5%安で推移している。今後のCHFを展望するうえで、スイス中銀(SNB)の金融政策などを整理しておきたい。
6月16日、SNBは15年ぶりの利上げに踏み切り、政策金利を50bps引き上げた。9月22日には75bpsの追加利上げを決定、政策金利は7年間続いたマイナス金利を脱却し0.5%となった。10月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比3.0%と29年ぶりの高水準を付けた8月(同3.5%)をピークに鈍化したが、中銀目標(0-2%)を上回る。最新の物価見通しによれば、CPI上昇率は2023年1-3月期まで同3.4%で推移、同2.0%を下回るのは同年10-12月期と予測する。今月14日、ジョルダンSNB総裁は12月15日の次回会合で追加利上げを実施する可能性を示唆。市場では利上げ幅が50bpsに縮小されるとの織り込みが進む。
SNBの高官らは、「インフレ率を近隣諸国よりも低水準に維持するのにCHF高は役立っている」との認識を示しているが、「為替市場を注意深く監視し、必要であれば介入する用意がある」と表明している。2015年の対ユーロの上限撤廃(1ユーロ=1.20CHF)によって、CHFは高騰し、輸出企業を中心に批判を招いた。だが、輸出企業はコスト削減や製品開発などによって為替リスクへの対応を講じ、GDPに占める輸出の割合は増加傾向をたどっている。SNBは当面、利上げペースとCHFの過度な変動に目配りすることになろう。