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2022年11月第4週目(21日~25日)の相場展望

2022-11-21

先週は全般にリスクオンからの利食いが出た。また米国仮想通貨取引所のFTXの経営破綻からの悪影響が若干ながらも金融市場に影響があるのか心配されているようだ。資金流用と会計不備等が発覚し、完全な企業統治不全に陥っていたことと、関連会社でFTXより規模が大きい暗号資産取引所GEMINIは、FTXの破綻の影響を受けており、数千億円規模の損害を被る可能性が出てきた。このような相場関連会社の破綻は、カバー先などの関連会社に飛び火しやすいため、仮想通貨の大幅下落も伴い、芋づる式に破綻が繋がっていくと、大きな金融機関まで悪影響を被る可能性もあり注意は必要だろう。リーマンショックの時がそうで、住宅バブルの崩壊が低所得者向け住宅ローンであるサブプライムローンの証券化でその証券の価格が暴落したことに起点し、リーマンブラザーズの破綻に繋がり、連鎖して他の金融機関にも影響が及んだ。現在のところ、そのような巨大な悪影響迄は観測されないが、今後どこの関連会社に繋がっていくのか否かどうかに目を配る必要はあるだろう。

米国経済指標の悪化と消費者物価上昇率がやや緩和気味であるため、FRBの面々から今後の利上げ幅の縮小へコメントがなされている。12月の利上げ予想は0.5%が80%以上の確率を維持しており、株式相場の戻りとドル売り相場後の落ち着きどころを探る展開となっている。ある記事によると、「英年金基金の運用危機が露呈したトラス・ショック以降、アングロサクソン中銀が大幅利上げ幅の縮小へと苛烈利上げ路線の修正へと傾斜し始めた」というコメントを出す専門家もいる。FRBナンバー2であるブレイナード副議長が急にハト派に転換したことがそれを物語っているのかもしれない。しかし先週の委員からのコメントはほぼ一貫して、CPI低下からの楽観的な見方を払拭するようにインフレ懸念と利上げの継続を訴えている。まだまだ金利に振り回される相場は続くだろう。それらの結果から相場は中立の状態で年末を控えポジションが縮小しているため、反動率も下がりやすい環境だ。ポーランドにミサイルが着弾し2名が死亡したという報道がなされたときは、相場がリスクオフに急転するのでは?と思ったが、そこまでではなく落ち着いた動きであった。次の大きなイベントである来月14、15日のFOMCまで、市場の動きが限定されそうな気配が続いている。ただ大きな動きを年内はずっと続いているだけに、いつ何時急な動きに戻る可能性はある。

日米の金利差とドル円相場の連動は強いままであるが、直近ではドル円の大幅下落で金利差以上に下げている感がある。日本の10年債金利水準は日銀が以前0.25%を上回らないようなオペレーションを継続しているのでほとんど変化が無いので、金利差は米国の金利次第となってくる。その米国の10年債利回りとドル円の相関係数は、今年の前半は98%あったものが7月以降は92%に低下している。以前の相関係数からみると145円まで上昇してもおかしくはないが、今回の下落は、年末を控えての投機筋のポジション調整によるものだと考えている。金利差以上にポジションの差が大きかったと考えられる。この連動性は来年も続くと思っており、また直近10月の日本の貿易赤字額が今年5回目である2兆円を越え、10月としては1979年以降では最も大きかった。原油高が輸入コストを増加させており、この傾向が来年も継続すると思われる。その貿易赤字が続くとなると円売りの実需が多くなるため、ドル円が下がったところは、輸入絡みのいう需要がまだまだ大きいはずだ。これは実需であるため、投機筋が引いた後と年末に向けて相場への影響が比較的大きくなると思われる。チャートから見ると週足で大きな陰線を引いただけに、高値を追っていく動きになるのは時間が掛かると思われる。短期的には下値模索からレンジの可能性が高い。FRBがCPIの若干の下落に釘をさすコメントで下値も堅くなっている。次の大きなイベントは来月のFOMCであり、それまで時間があることでポジション調整と実需の買いで動きが限定されそう。ドル円日足の一目均衡表の先行スパンBである雲の下限をしっかり下回ることが出来ず推移しているが、今週139円を割り込むことがあると逆にこのラインが上値抵抗となってくるから現在は微妙なレベルに位置している。ただラインを下回ったとしても買い需要はまだ多いと思われ大きな下落とはならないと見ている。上昇基調が強まるとすれば移動平均線の5日線(赤の太い線)と25日線(黄色の太い線)の両方が上向きになるタイミグだろう。5日線が下に向けば売り優勢、上に向けば短期で買い優勢程度だろうか。レベルに関しては大きな動きの後だけに、決まったところはなく、移動平均線の傾きで見る方が分かりやすいと考える。

ドル円日足チャート




ドル円に関しては高値から大きな下げであり、一見すると円買い相場に見えるが、実はクロス円ではそれほど大きく下げてはおらず、要はドル売りだったことが伺える。ユーロ円とポンド円などはどちらかというと堅調な動きを保っており、先週は上昇となり再度高値を伺うレベルで推移している。クロス円も相まった円買いとなればドル円の下落が継続するという考えは道理に合っているが、クロス円が違う動きの場合、ドル円が下落相場に転換したという考えは時期尚早ではないだろうか。

ユーロ円の日足チャート




今週は、日本が休場となる水曜日に欧米のPMI発表予定。また米国の新築住宅販売件数やFOMCの議事録などが控える。議事録内容に相場はやや動意する可能性もあり、注意は必要だろう。また欧州ECB理事会議事録も発表予定となっている。
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