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米国:金融機関の融資基準は一段と厳格化

2022-11-17

■ 融資需要は減少領域に落ち込む

■ 融資基準は一段と厳格化し、経営環境の悪化や不確実性の高まりが意識される


   米連邦準備理事会(FRB)は11月7日に、最新のシニア・ローン・オフィサー・オピニオン・サーベイ(SLOOS)を公表した。これはFRBが米金融機関に対して3カ月前と比較した融資基準や資金需要などの変化について四半期ごとに聞き取り調査を行うもので、調査対象となる金融機関は9月26日に調査票を受け取り、10月7日までに回答した。これによれば、大・中企業(年間売上高5千万ドル以上)向け融資需要DI(全回答に占める需要増加の割合-需要減少の割合)はマイナス8.8と前回7月調査(プラス24.2)から大幅に低下し、マイナス圏(需要減少超過)に落ち込んだ。融資需要が弱まったと回答した銀行の大部分は在庫積み増し意欲の低下や固定資産投資の減少、M&Aなどに伴う資金調達ニーズの減少を理由に挙げている。

   また、融資基準DI(全回答に占める厳格化の割合-緩和の割合)はプラス39.1と、前回調査(プラス24.2)から大幅に上昇。6四半期ぶりにプラス圏(厳格化超過)となった前回調査から一段と上昇し、新型コロナの感染拡大期(2020年1月調査から7月調査)を除けば、2009年1月調査以来の高水準となった。融資基準や融資条件を厳格化したと回答した銀行の大部分は経営環境の悪化や不確実性の高まりを理由に挙げている。融資基準DIは設備投資や鉱工業生産、新規雇用の先行指標として有効に機能してきたほか、企業の営業利益率に対して概ね3四半期の先行性が確認されている。金融情報会社リフィニティブの集計(11日時点)によれば、S&P500構成企業の予想一株あたり利益(EPS)は2022年が5.9%増、2023年が5.0%増と、それぞれ10月初め(7.7%増、7.8%増)から下方修正されている。市場では、景気悪化は織り込まれつつあるものの、景気後退が現実となればEPS見通しが一段と悪化するおそれがあり、警戒すべきであろう。

   なお、今回のSLOOSでは追加で、向こう1年で景気後退が起こる可能性と深刻さ、および景気後退発生時の融資基準の変化について聴取された。景気後退の可能性について、8割弱の金融機関が40-80%、2割弱が80%以上とした一方で、深刻度については約3割が軽度(向こう1年で実質GDPが0.6%減少すると想定)、6割強が平均的(同1.1%減少を想定)、1割弱が重度(同3.4%減少を想定)と予想していた。景気後退を見通しながらも、深刻度についてはまちまちな想定となっていることが読み取れる。

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