米国:FOMCプレビュー
2022-11-01
■ 今回のFOMCでは75bpsの利上げを行うが、データ次第の政策運営姿勢を維持しよう
■ 米経済指標やFOMC要人発言にはこれまで以上に関心が高まる見込み
先週公表された米経済指標は米連邦準備理事会(FRB)による大幅利上げの継続観測を再び強める結果となった。9月の個人消費支出(PCE)デフレーターは前月比0.5%上昇と前月と同じ伸びとなり、前年比では5.1%上昇と前月(同4.9%上昇)から伸びが加速した。また、7-9月期の米雇用コスト指数は前期比1.2%上昇と市場予想と一致し、前年比5.0%上昇となった。同指数は賃金や福利厚生など人件費の動向を映し、賃金・給与が同1.2%上昇と前期(同1.6%上昇)から鈍化したものの高い伸びを維持した。労働需給が逼迫した状況には緩和の兆しがみられるものの、賃金上昇圧力は根強く、中長期的な物価高につながるとの懸念を強める内容と解釈される。FRBはこれまで、今後の利上げペースについて「データ次第」との姿勢を貫いてきた。住宅市場などに変調の兆候はみられるものの、足元の労働市場・物価動向に関わるデータには利上げペースを鈍化させる手掛かりを見い出しにくい状況にある。
こうしたなか、今週11月1、2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では75bpsの利上げが見込まれ、今後の利上げに関する情報発信に関しては、インフレ抑制を最優先し、今後入手するデータに応じて機敏に政策を運営するこれまでの方針を改めて示すと思われる。仮にパウエルFRB議長が先行きの利上げペース鈍化に踏み込んだ発言をするようであれば、米金融市場は長期金利低下と株高で反応しよう。ただ、これによる金融環境の緩和や資産効果による消費の活発化により、結果的にインフレを高止まりさせる要因となりうる。これまでパウエルFRB議長はこうした金融市場と実体経済の関連性を望ましくないとしてきており、そうした発言をする可能性は低いと思われる。その一方で、12月13、14日のFOMC会合までに多くの経済指標が公表されることから、大幅利上げの継続観測を一段と強めるコミュニケーションを行い、政策決定の自由度を低下させることもまた考えにくい。今次会合直後の金融市場の値動きは限られようが、今後の利上げペースを探ろうと、米経済指標やFRB要人発言にはこれまで以上に市場の関心が高まり、これらに神経質な反応を示すこととなろう。