ECB理事会レビュー:追加利上げ姿勢は変わらず
2022-10-31
■ ECBは主要政策金利を75bpsずつ引き上げたうえ、TLTROⅢの条件変更を決定
■ 金融市場は「金利低下、ユーロ安」で反応したものの、ECBの追加利上げ姿勢は変わらずと想定
10月27日に欧州中銀(ECB)は理事会で、主要政策金利を75bpsずつ引き上げた。利上げ幅は2会合連続で75bpsとなり、中銀預金金利は2009年以来となる1.50%に達した。また、ターゲット型長期流動性供給オペ第3弾(TLTROⅢ)の条件変更を決定。具体的には、政策金利の引き上げに応じて今年11月23日以降、TLTROⅢでの適用金利を従来の「中銀預金金利-0.5%」から「ECBの主要金利の平均に連動」とした。一方、こうした金融引き締め方向の政策決定にも関わらず、欧州国債利回りの低下、ユーロ安で金融市場は反応している。
こうした金融市場の反応は、理事会終了後に公表された声明やラガルドECB総裁の記者会見の内容を受けてと整理している。前回の声明にあった追加利上げを巡る「今後、数会合にわたって(over the next several meetings)」との文言が削除された。また、ラガルドECB総裁は、「それ(政策のサポート)を撤回するため、かなりの進展を遂げた(we have made substantial progress in withdrawing that)」と発言した。これらが前日のカナダ中銀(BOC)総裁の発言「現在の引き締め局面は終わりに近づきつつある」と重なり、ユーロ圏の短期金融市場では、来年までの利上げ織り込みが従来の3%付近から2.5%台まで低下したとみている。
ただし、ラガルドECB総裁は「我々は将来的に利上げを行い、さらに正常化プロセスを進める(We will have further rate increases in the future so the normalisation process continues)」と述べており、追加利上げ姿勢は継続している。加えて、「物価上昇リスクは上方修正、経済成長リスクは下方修正」と見通しを示した通り、欧州天然ガス先物価格の下落を受けても、物価上昇への警戒は解除していない。今回、ECBがフォワードガイダンスを改めて撤回したことは事実だが、それが来年にかけての利上げの最終到達点(ターミナルレート)引き下げを意味すると考えるのは、早計だろう。当行は現時点で、今年12月の理事会以降、徐々に1回の理事会で実施される利上げ幅が50bps、25bpsと縮小していくものの、ターミナルレートは3.00%との見通しを維持する。