米国債券:投資環境の変化を注視
2022-10-21
■ 年初来では信用リスクの悪化より米国債利回りの上昇が債券指数の下落に大きく寄与
■ 来年前半にかけて投資環境の変化が見込まれる
今年は米国債券の投資環境が大きく悪化した。米国債券指数(ブルームバーグ債券指数)の年初来下落率(19日時点)を確認すると、米ハイイールド(HY)社債指数(14.0%)、米国債指数(14.6%)、米投資適格(IG)社債指数(20.3%)の順で大きくなっている。米10年国債利回りは2.62%(1.51→4.13%)、2年国債利回りは3.83%(0.73→4.56%)、とそれぞれ上昇しており、米国債利回り曲線全体が上昇したうえ、短期ゾーンの上昇幅が大きくなっている。米連邦準備理事会(FRB)による異例の急速かつ大幅な利上げにより、米国債や米IG社債のパフォーマンスが大幅に悪化したと言えよう。一方、社債と同年限国債の利回り差(スプレッド)の拡大幅は、IG社債が0.72%(0.92→1.64%)、HY社債が2.22%(2.83→5.05%)と、景気悪化を織り込む動きを示しているものの、信用リスクの高まりの影響は相対的に小さかったと判断される。
このような米国債券の投資環境は、来年前半にかけて変化することが見込まれる。9月に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)で示された金融政策見通しによれば、来年前半に利上げを停止し、2024年半ばまで同水準で据え置くとの見方が中心的だ。足元ではインフレの鈍化ペースが想定より緩やかとの見方から、大幅利上げの継続や今次利上げ局面における政策金利の到達点(ターミナルレート)の上振れへの思惑が浮上していることは気がかりだが、米景気悪化懸念は時間の経過とともに強まることが想定され、米10年国債利回りの上昇余地は限られよう。一方、FRBが8月に公表した調査によれば、米金融機関は大幅かつ急速に融資基準を厳格化したことが明らかとなったほか、一部の米大手金融機関は7-9月期決算で景気後退に備えて引当金を積み増している。この先は金利上昇リスクより信用リスクへの警戒を強めるべきと考え、米国債の投資判断をやや強気に引き上げ、米社債を中立に据え置いた。なお、米IG社債指数の最低利回りは6.1%、米HY社債では9.6%となっており、目先の価格変動リスクを理解したうえで、中期的な利回り獲得を目的とした社債投資には引き続き妙味があるとみている。