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英金融市場の迷走は続く

2022-10-20

■ 英財務省は減税計画を撤回、歳出削減と歳入増加で財政悪化の回避に努める

■ 英中銀はバランスシート縮小に着手し金融引き締めを強化、英金融市場の不安定さは続こう


   17日、ハント英新財務相は、9月末に打ち出された450億ポンドの減税計画についてほぼすべてを撤回した。具体的には、来年4月に引き下げる予定だった所得税の基本税率を恒久的に20%に維持し、年約60億ポンドの国庫負担を削減する。また、現在19%の法人税率を来年には25%に引き上げ、向こう5年間におよぶ675億ポンドの財政負担を回避する。大規模なエネルギー支援策については、「向こう2年間」から「来年4月」までの期間に短縮し、その後は対象を絞り込む方針とした。これらの財政計画を修正することで、年320億ポンドの歳入が確保される見通しだという。

    英中銀(BOE)は予定通り、緊急国債買い入れ策を14日に終了。来月1日には、金融緩和策で保有する英国債8380億ポンドの売却を開始する方針を示した。ただし、年内は短中期セクターに限定し、20年超の超長期国債は売却の対象から外した。財源を伴わない経済対策の発表に端を発し、9月末の英国債価格は急落。BOEの迅速な対応を好感し、20年国債利回りは3日に3.88%台まで低下したが、12日に5.1%台へ再び急騰。金融派生商品の評価損が膨らみ、年金基金が国債を投げ売りするとの警戒が利回りの上昇に拍車を掛けた。

  ベイリーBOE総裁は、今回の緊急措置は特定の水準に誘導するような介入が目的ではなく、市場が機能不全に陥らないためだと説明。こうした事態を避けるべく、BOEは市場を監視し適宜に国債の売却を進める方針だ。だが、調査会社ユーガブが同日に実施した世論調査によれば、トラス政権への不支持率は77%と過去11年間で最高水準だという。財務省の中期財政計画や、独立財政監視機関である予算責任局(OBR)の財務予測が公表される31日までは、株式・債券・為替(ポンド)の不安定な動きは続きそうだ。
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