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世界経済:危機の先頭に立つ欧州

2022-10-18

■ IMFは世界経済見通しを下方修正し、約3分の1の国で2022、23年にかけて経済の収縮を想定

■ 他の先進国よりもスタグフレーションが明確となる欧州が、政策調整の先導役を担うことになる


   先週10-16日にかけて、米ワシントンにて国際通貨基金(IMF)・世界銀行グループの年次総会が開催され、国際機関および主要国の経済閣僚・高級官僚が集まって世界経済の先行きや政策課題などに関する討議が行われた。

   会期中の12日にはIMFから最新の「世界経済見通し(WEO)」が発表された。2023年の世界経済の成長率は7月時点の2.9%から2.7%へ下方修正され、2022年(3.2%)からの減速が一段と明確になることが見通された。先進国、新興国の大半で2023年の成長率見通しが引き下げられ、世界経済の約3分の1は2022年もしくは23年に収縮することが指摘されている。先進国では、特に欧州各国で見通しの引き下げが目立った。ユーロ圏は2022年の3.1%成長から2023年に0.5%へ成長ペースが急減速し、ガス需給ひっ迫の影響が大きいドイツ(マイナス0.3%)、イタリア(マイナス0.2%)では、通年でマイナス成長に転落することが見通された。対照的に米国や日本では、2023年の成長率見通しは小幅修正にとどまり、2022年からの減速も相対的に緩やかなペースとなっている(米国:22年1.6%→23年1.0%、日本:22年1.7%→23年1.6%)。

   欧州の苦境は物価見通しにも表れている。2023年の消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しは、ユーロ圏(5.7%)が米国(3.5%)、日本(1.4%)を大幅に上回る。ユーロ圏と同様に2%のインフレ目標を上回る米国と比べても、2022年からの上昇ペースの鈍化は限られている(米国:22年8.1%→23年3.5%、ユーロ圏:22年8.3%→23年5.7%)。構造的なガス供給不足が続くなかインフレ抑制が進まず、他国と比べても物価の高止まりが際立つようになることが見込まれている。

   2023年は、景気減速感が強まるなかで物価が高止まるスタグフレーションの様相が世界的に強まる可能性が高い。ただその深刻度には地域差があり、WEOでは欧州が最も困難な状況に直面することが示されている。経済状況の変化に応じて金融政策の難易度は高まり、欧州中銀(ECB)がフロントランナーとして政策判断の難しい舵取りを担うことになりそうだ。
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