7-9月期の国内投信市場動向と分散投資への対処法
2022-10-17
■ 7-9月期も、国内投信市場では海外資産中心の投資を継続する傾向が確認された
■ ただし、直近では株式と高格付債券の相関が急激に高まっており、分散投資の効果が低下
7-9月期の国内投信市場は約1兆8800億円の資金流入超であり、全ての資産クラスで流入超を記録した。内訳では、海外株式へ投資するファンドへの資金流入額が最も大きく、約9000億円。バランス型ファンドが約2500億円。海外債券と国内REITへは約1300億円ずつだった。なお、海外資産への投資が顕著であるという国内投資家の傾向に変化はない。
7-9月期の金融市場では、株式と高格付債券の下落幅拡大に加えて、相関の高まりが確認できた。こうした傾向が長期投資家を悩ませている。先進国株式(MSCI World、配当込み)と先進国投資適格(IG)社債(Bloomberg指数)を例に挙げると、騰落率は先進国株式がマイナス6.1%、先進国IG社債がマイナス6.6%だった。また同期間の相関係数(以下、原則日次ベース)はプラス0.56と、2021年通年(プラス0.10)から上昇し、価格の連動性が高まったと言える。つまり、7-9月期は期待された分散投資の効果が小さくなっている状況にある。
長期投資を前提とした場合、分散投資を巡る直近の傾向を一時的と割り切ることも、一つの対処法となろう。ただ、主要国中銀が来年にかけて金融引き締めを進めた場合、今の傾向が続く可能性は否定できない。価格動向に対する見通しは別途検討が必要だが、こうした傾向への対処法として次の2案を検討したい。(1)日本株式と日本社債のポートフォリオに組み替え、(2)高格付債券への比率を高め、インカムゲイン重視のポートフォリオとする、である。
(1)は相関係数の低さがポイントだ。日本株式(TOPIX、配当込み)と日本社債(Bloomberg指数)の組み合わせでは、2021年(マイナス0.24)から今年7-9月期(プラス0.09)は上昇したものの、先進国資産の組み合わせに比べて低水準にとどまる。これは、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策によって10年国債利回り上昇が抑えられたためと推測する。したがって、日銀の金融政策姿勢の修正観測が高まるタイミングを見極める必要がある。(2)は債券指数の期待リターンとされる「最終利回り」の高さがポイントだ。例えば、先進国IG社債は9月末時点で5.1%台と、2008年以降の平均値(3.0%、月次ベース)を大きく上回る。債券利回りが一段と上昇した場合でも、高水準の利子収益獲得で債券価格下落による損失の影響を薄めながら、時間を味方につけて直近の投資環境悪化を乗り切ることを狙う。