米雇用統計:雇用増が続くが、労働需要には鈍化の兆候
2022-10-12
■ 9月の米雇用統計では雇用情勢・賃金動向は明確に軟化せず、FRBの金融引き締め継続を追認
■ ただ、労働需要には鈍化の兆候がみえ始めており、金融引き締めの効果が表れつつある
9月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP、前月比26.3万人増)の増勢が2カ月連続で鈍化したものの、20万人を上回る増加が続き、失業率(3.5%、同0.2%ポイント低下)も自然失業率を下回る水準で安定するなど、雇用情勢は依然として堅調であることが確認された。平均時給(前年比5.0%増、前月比0.3%増)は前月比で8月とほぼ同等の増加となり、賃金上昇ペースにも変化はみられなかった。今回の雇用統計では雇用情勢や賃金動向の明確な軟化は観測されず、基調的インフレの加速を抑制するために、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めを継続する必要性を改めて示す内容であった。
もっとも、労働需給のひっ迫については足元で緩和の兆候も表れ始めている。9月のNFPの内訳をみると、採用難が続いていた小売業(同0.11万人減)や運輸・倉庫業(同0.79万人減)で雇用者数が減少に転じ、これらの業種で労働需給ひっ迫が緩和しつつあることを示唆する。また、8月時点のデータではあるが、求人労働異動調査(JOLTS)をみると、労働需要を示す求人件数(1005.3万件、前月比111.7万件減)が大幅減少した。チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が公表する9月の人員削減報告では、企業の人員削減計画数(2万9989人、前年比67.6%増)が急増し、4カ月連続で前年の水準を上回った。同報告では、採用計画数(38万14人、同59.6%減)が急減し、年末商戦に向けて1年で最も求人募集が多い9月として2011年以来の低水準となった点も注目される。JOLTSでは、依然として求人件数が離職者数(8月:597.6万人)を大幅に上回っており、労働需要が労働供給を超過している状況は変わらないものの、これらのデータは労働需要の鈍化を示している。金融引き締めの効果が労働市場に表れ始めており、現時点では、米労働市場はFRBの見通しに沿って推移している。