ユーロ圏マクロ経済見通し
2022-10-11
■7‐9月期以降、成長ペースは急減速へ
■天然ガス価格上昇が続いており、大幅利上げ継続の公算
ユーロ圏は4-6月期まで高成長が保たれてきたが、7月以降はガス供給不足や物価高騰の影響が表れ、成長ペースは急減速することが見込まれる。
ユーロ圏の景気一致指数であるユーロコイン指数は、ガス供給不安が強まった7月(0.38)に急低下し、異常気象、ロシアからの天然ガス供給パイプラインの稼働停止など景気抑制要因が加わった8月(0.23)は一段と低下した。9月も景況感指数(93.7)、消費者信頼感指数(マイナス28.8)、センティックス投資家信頼感指数(マイナス31.8)などの低迷が続いており、PMI(9月速報値、製造業:48.5、サービス業:48.9)は、製造業、サービス業ともに事業活動の拡大・縮小の基準となる50を下回った。実質GDP成長率との連動性が高い総合PMIは7月以降、50を下回って推移しており、7-9月期はマイナス成長への転落が示唆される状況にある。燃料需要が高まる今冬はガス需給が一段とひっ迫し、15%の自主削減などにより景気抑制圧力がさらに強まることが想定されている。
一方で物価高騰には歯止めがかからず、8月の消費者物価指数(HICP、前年比9.1%上昇)は統計開始以来最も高い上昇の更新が続いている。天然ガスなどのエネルギー価格以外にも、財・サービス全般、賃金(4-6月期:前年比4.1%増)などで物価上昇ペースが加速し、基調的なインフレも強まっている。欧州中銀(ECB)は9日に政策金利を0.75%引き上げ、今後数会合は利上げを継続する方針を声明文に明記した。利上げ幅はデータに基づいて判断するとしているものの、天然ガス価格の高騰が続き、基調的なインフレにも鈍化の兆候がみられないなか、大幅な利上げが継続される可能性が引き続き高い。