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ブラジルの注目イベント:金融政策と大統領選挙

2022-10-10

■ ブラジル中央銀行は13会合ぶりに利上げを実施せず、政策金利を13.75%で据え置きに

■ 大統領選挙は10月30日の決選投票まで持ち越し、金融市場にはプラスに寄与する見通し


本稿ではブラジルについて、9月以降の2つの注目イベントを整理する。(1)9月21日に開催されたブラジル中央銀行(BCB)の金融政策決定会合では、13会合ぶりに利上げを実施せず、政策金利を13.75%で据え置いた。また、(2)10月2日に投開票の大統領選挙では、ルラ候補とボルソナロ候補による決選投票が決まった。決選投票は10月30日に実施予定である。

(1)は、主要国のなかで真っ先に利上げサイクルを停止した点で特筆される。9月19日にゲジス経済相が「来年には多分、利下げが実施されよう」と見方を示しており、金融市場の次の注目は利下げ実施時期だ。7月と8月の消費者物価指数(IPCA)が前月比で2カ月連続の下落だった点も、利下げへの思惑を後押しする。一方で、エネルギーや食品価格以外の物価上昇率はまだ高水準であり、現時点では少なくとも来年までは利下げが実施されないとの見方が、市場の多数派である。9月30日にネトBCB総裁は、「金融緩和を考えるのは時期尚早」と述べた。BCBが利上げサイクル再開に含みを持たせている点は、考慮しておくべきだろう。

(2)は、金融市場の予想を裏切る結果だった。選挙直前の世論調査ではルラ候補がボルソナロ候補に大差でリードしていたことから、1回目投票で単独過半数を獲得との見方が多数派だった。ボルソナロ候補の善戦は、現職として政策を実行してきた強みだろう。一例として、ボルソナロ候補が再選した場合、月間600レアルの貧困層向け現金給付は、来年も維持される公算が大きい。また、新たに約400万人の個人や約40万社の企業に対する債務免除計画などを打ち出し、経済を争点の中心とする思惑が見て取れる。対して、ルラ候補は1回目投票で3位と4位だった候補・政党と連立し、「中道左派連合」結成に漕ぎ付けたと伝わる。

金融市場への影響では、特に(2)が短期的にブラジル資産やレアルへプラスに寄与する見通し。単独過半数を獲得できなかったルラ候補が、政策を金融市場にポジティブに評価される方向へシフトするとの見方が広がったためだ。足元で、ブラジルの主要株価指数は今年4月以来の高値圏で推移し、レアルは多くの新興国通貨が下落するなか、比較的堅調な値動きをみせる。米ドル高が緩和となった場合、ブラジル市場への注目度が高まるとの見方を維持する。
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