メキシコとインド:中銀は追加利上げへ、為替は対照的
2022-10-04
■ メキシコ中銀は11会合連続、インド中銀は4会合連続の利上げ実施、両中銀はさらなる利上げへ
■ 直近では両国の為替動向は対照的、エネルギー資源に対する立ち位置の違いが分水嶺に
9月も、日本以外では先進国と新興国を問わず、多くの中央銀行が利上げを実施した。本稿では、9月末に中央銀行が政策会合を行った新興国のうち、特にインドとメキシコを取り上げる。合わせて、両国通貨の動向についても簡単に整理しておく。
9月の政策会合では、両中銀とも追加利上げを決定した。メキシコ中銀は11会合連続、インド中銀は4会合連続の利上げを実施。これで、政策金利はメキシコが9.25%、インドが5.90%に達した。両国とも依然物価上昇圧力は高く、8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、メキシコが前年比8.70%、インドは同7.00%と、ともに中銀の目標レンジ(メキシコ:同2-4% / インド:同2-6%)を上回る。金融市場では、メキシコ中銀は年末にかけて政策金利を10.0%、インド中銀は6.5%まで利上げ継続との予想が多数であり、両国中銀は追加利上げ姿勢を維持。
一方で、両国の為替動向は対照的だ。ドル高を背景に新興国通貨の多くは弱含んでいるが、インドルピーは対ドルで過去最安値を更新中である。インド中銀はドル売り・ルピー買い介入を継続しているものの、昨年末時点の74ルピー台前半から81ルピー台後半まで、約10%のルピー安となっている。対して、メキシコペソは比較的安定して推移しており、対ドルは昨年末時点の20.4ペソ台後半から20.1ペソ台前半へ、わずかながらもペソ高となっている。
両国通貨の値動きの背景は、今のところ「エネルギー輸入国」と「エネルギー輸出国」の違いと認識している。インドは鉄鉱石やボーキサイトなどの鉱物資源が世界有数の埋蔵量を誇る一方、原油輸入量は世界第3位(2021年時点)と、エネルギー資源の輸入依存度が高い。直近では割安なロシア産原油の輸入を増やしたとみられるが、経常収支は昨年7-9月期以降、赤字が続く。対して、メキシコは原油生産量が世界第11位(同上)、原油輸出額が世界第14位(同上)とエネルギーを自前で賄い、エネルギー価格上昇の恩恵を受ける。また、隣国が最大の貿易相手国の米国であり、米国景気の底堅さがペソにとってもプラスに働いている。ただし、北海ブレント先物価格は9月下旬に、今年1月以来となる83ドル台まで軟化する場面があった。新興国通貨に対するエネルギー価格の影響が変わりつつある点には、注意したい。