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米国株:水準調整による一段の株安を警戒

2022-10-03

■ 実質金利の上昇で、予想PERには低下余地が広がる

■ リスクプレミアムは割高感の強さを示す


    8月の米消費者物価指数(CPI)を受けてインフレが高止まりするとの懸念が強まったほか、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの政策金利見通しで、年内に4.5%前後までの利上げと来年以降の政策金利の高止まりが見込まれていることが明らかとなり、景気後退懸念が再燃。S&P500は9月中旬以降下げ足を速め、27日に年初来で23.5%下落となり年初来安値を更新した。この間に予想株価収益率(PER、向こう1年)は昨年末の21.7倍から16.2倍に低下しており、新型コロナ禍後の最も低い水準(2022年6月、15.8倍)に接近しているほか、2012年以降の平均(16.9倍)を下回り、割安感を意識する向きもある。

    ただ、予想PERとは強い逆相関の関係にある実質金利は1.5%付近まで上昇している。2019年以降の両者の相関性をもとに試算すると、予想PERには14倍を下回る水準まで低下余地が残されていることとなる。

    さらに、リスクプレミアムで株価水準を解釈すると、異なる判断が示される。リスクプレミアムは株式の期待収益率を示すとされる益回り(向こう1年予想1株あたり利益/株価)から米10年国債利回りを差し引いて算出され、投資家が1年間の株式投資に対して安全資産をどの程度上回る利回りを求めているかを示す。数値が小さいほど株価が割高なことを意味するが、S&P500のリスクプレミアムは今年に入り2.5%をたびたび割り込み、足元で2.47%まで低下。2007年11月以来の低水準付近にあり、足元の株価は割高感が強いと認識される。リスクプレミアムの適正化には、米10年国債利回りの低下、もしくは益回りの上昇につながる企業利益の拡大や株価下落が必要である。実質金利やリスクプレミアムの観点からは、水準調整による一段の株安を警戒すべきシグナルが発せられていることを認識したい。

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