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BOE:金融・財政政策の狭間で通貨政策は

2022-09-29

■ 財政規律が損なわれるとの懸念は英国債と英ポンドの暴落を招き、BOEの利上げ観測を高める

■ 見通しの不確実性と財務の脆弱性が高まれば、ポンドの一段安は避けられないだろう


クワーテング英財務相は23日、所得税の最高税率廃止や基礎税率の引き下げ、法人税率の引き上げ凍結など450億ポンド規模の減税(2026/2027年まで)を発表した。また、家計や企業向けの光熱費高騰の補助として今後半年間で600億ポンドを拠出、2022/2023年の国債発行を2341億ポンドへ増額する計画だ。1972年以降で最大となる大型減税と国債増額は持続不可能だとして財政悪化への懸念が強まり、英国債は暴落(利回りは急騰)、ポンド売りに拍車が掛かった。ベイリー英中銀(BOE)総裁は26日に緊急声明を発表。「2%の物価目標達成に向けて、必要であれば躊躇なく金利を引き上げる」としたが、「政府発表が需要とインフレに及ぼす影響とポンド安について次回委員会で入念に評価する」ことを明らかにした。BOEのチーフエコノミスト、ピル氏も「大幅な政策対応」を行う可能性が高いものの、11月3日の金融政策委員会(MPC)まで待ちたい考えを示した。

26日、ポンドドルは1.03ドル台の史上最安値を更新、1日の下落率としては2020年3月以来最大となった。国際通貨基金(IMF)によれば、英国の政府債務残高(対GDP比)は87.8%と主要7カ国のなかではドイツ(70.9%)に次いで小さく、日本(262.5%)、イタリア(150.6%)、米国(125.6%)を大きく下回る(2022年推計値)。ただ、英予算責任局(OBR)は50年後には267%に達するとの基本予測を7月に発表。英財務省は11月23日に「中期財政計画」とOBRの成長率・債務見通しを公表する予定だが、IMFは金融政策効果を損なう恐れがあるなどと警告。増税や歳出削減は喫緊の課題で、見通しの不確実性と財務の脆弱性が高まれば、ポンドの一段安は避けられないだろう。市場では緊急利上げ観測は後退したが、11月3日のMPCで125bpsの利上げを織り込む動き。BOEのポンド買い介入実施への思惑もくすぶるなか、ポンドの乱高下はしばらく続こう。

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