日銀政策会合・為替介入・ドル円相場
2022-09-28
■ 介入の影響から短期的にドル円の上値は重くなろうが、基調としての円安地合いは続く見込み
9月22日のドル円相場は、3つのイベントを受けて乱高下した。正午すぎ(東京時間)に日銀が金融政策決定会合(以下、政策会合)の結果を発表、15時30分(同上)からは黒田日銀総裁の記者会見が開催され、ドル円は一時145円89銭まで上昇した。その後、17時過ぎ(同上)に財務省と日銀が円買いの為替介入を実施し、米国時間にかけて140円34銭まで急落した。
今回の政策会合で日銀は、金融政策の現状維持を決定。市場予想通りであり、市場の反応は限られた。注目を集めたのは、黒田日銀総裁の記者会見。特に「フォワードガイダンス」に関する質疑応答で、「当面変更は必要ないが、『当面』とは『2-3年』と考えてもらってよい」と、自身の任期終了後も金融緩和が継続するとまで示唆した。ドル円が146円近くまで上昇したのは、こうした黒田日銀総裁の発言と21日に終了した米連邦公開市場委員会(FOMC)での積極的な利上げ示唆を受けた、日米金利差拡大の思惑が高まったためと解釈している。加えて、同日にスイス中銀がマイナス金利政策を脱却し、日銀は世界で唯一、同政策を採用する中銀となった。基調としての円安地合いは続くとの見方は維持しておきたい。
一方、目先のドル円相場では、介入実施直前につけた先週高値(145円89銭)付近で、追加の為替介入実施を巡る警戒感が高まりやすいと予想する。理由は大きく3点挙げたい。(1)介入実施の約3時間半前、わざわざ財務官が「為替介入はスタンバイの状態」と伝える場を設けた。これは、金融市場への「アナウンスメント効果」復活を意図した対応とみる。(2)介入実施はFOMC、日銀とスイス中銀の政策会合の終了後だった。円安材料がいったん出尽くしたタイミングを狙い、一段の円安進行を妨げた。(3)複数回の為替介入を行う余裕は、まだある。今回の介入金額は、日銀当座預金残高による推計で約3.6兆円との試算だ。対して、すぐ介入に使える海外中銀などへのドル預金の保有額は約19兆円(8月末時点)と推計される。
もちろん、外貨の介入原資が必要な円買い介入の場合、長期にわたって続けるのは難しい。ただし、日本当局は一時的な円安圧力の緩和に焦点を当てているとみられ、追加の為替介入実施は想定しておくべきと考える。早期に市場は先週高値をうかがうとみているが、追加介入の実施も含めて、目先のドル円は146円付近で上値が抑えられると予想する。