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米国:企業は自社株買いに慎重姿勢を強めたか

2022-09-27

■ 米企業の配当金額は4四半期連続で過去最高を更新

■ 自社株買いは急減したが、基調を見極めるには時間を要す


米S&Pグローバルの集計によれば、S&P500構成企業の4-6月期の株主還元策(配当、自社株買い)はまちまちの結果となった。配当金額は1406億ドルと前期(1376億ドル)から2.2%増加し、前年比では13.9%増となった。配当金額は新型コロナ禍でも相対的に落ち込みが小さかったが、着実な増加基調に回帰し、4四半期連続で過去最高を更新した。

一方、自社株買いは2196億ドルと、新型コロナ禍の落ち込みから回復途上にあった前年からは10.5%増と高い伸びとなったが、前期(2810億ドル)からは21.8%減少した。2015-2022年の8年間で、4-6月期の自社株買い金額が1-3月期を上回ったのは2018年と2021年の2回しかない。4-6月期には自社株買いの勢いが弱まる傾向が強く、基調を見極めるには7-9月期の結果を待つ必要があるだろう。それでも、企業が収益の先行き不透明感に対する警戒感から自社株買いに慎重姿勢を強めた可能性があることは認識しておきたい。セクター別では、情報技術(IT、720億ドル、前期比0.5%増)が高水準を維持して全体の約33%を占めた一方、金融(212億ドル、前期比61.2%減)、ヘルスケア(172億ドル、同58.2%減)、資本財(178億ドル、同27.9%減)などの減少が目立ち、S&P500の11セクターのうち7セクターが前期比減少となった。経営環境の違いが自社株買いの増減にも影響している。

経営者は自社株買いを行うことにより、発行済株式数を減らし1株当たり利益(EPS、純利益/発行済株式数)を増加させて、株価を上昇させることを狙う。金融情報会社リフィニティブの集計(9月23日時点)によれば、S&P500株価指数構成企業の7-9月期EPSは前年比4.6%増と前期(同8.4%増)から伸びが鈍化するほか、7月初め(同11.1%増)から下方修正が進んでいる。7-9月期も企業の自社株買い姿勢が慎重となれば、EPSを下支えする力が弱まるため、警戒したい。
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