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ユーロ圏経済見通し

2022-09-20

■景気の変調が一段と明確になる
■ 天然ガス価格上昇が続いており、大幅利上げ継続の公算

ユーロ圏では、ガス供給不足や物価高騰により、景気の変調が明確となっている。企業、家計のマインドは、7月以降、一段と悪化し、内需項目を中心に実際の経済活動の落ち込みも観測され始めている。

経済活動は強弱まちまちで中国での物流正常化とともに挽回生産が強まり、6月の鉱工業生産(前月比0.7%増)はコロナ禍以降最も高い水準を記録。

対照的に、小売売上高(同1.2%減)は2021年4月以来の低水準に落ち込み、物価高騰を受けて個人消費が鈍化しつつあることがうかがえる。また7月以降、ロシアによるウクライナ侵攻後に悪化した企業、家計、投資家のマインドは一段と落ち込んでいる。8月のPMI(速報値、製造業:49.7、サービス業:50.2)は製造業、サービス業ともに低下。欧州委員会が算出する景況感指数(97.6)、消費者信頼感指数(マイナス24.9)、投資家や専門家の景況感を示すセンティックス投資家信頼感指数(マイナス25.2)、ドイツ(独)ZEW景気期待指数(マイナス55.3)は急低下した7月に続き、8月も低迷している。原燃料価格高騰が続くなかで天然ガス調達、熱波、干ばつへの不安が広がり、生産、家計消費など、経済活動の収縮が進んでいることが示唆されている。

また、エネルギー価格高騰には歯止めがかからず、7月の消費者物価指数(HICP、前年比8.9%上昇)の上昇ペース加速が続いている。ガソリン価格の高騰が止まった米国ではエネルギー価格の急上昇に歯止めがかかり始めたものの、天然ガス価格高騰が続く欧州は、インフレのピークアウトは米国よりも遅れる可能性が高い。欧州中銀(ECB)は7月21日に政策金利を0.50%引き上げ、9月以降も利上げ継続の方針を掲げている。利上げ幅はデータに基づいて判断するとしているものの、天然ガス価格上昇が続いており、大幅利上げ継続の蓋然性が高まっている。
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