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中国経済:政策支援により景気減速に歯止めがかかる

2022-09-19

■ ゼロコロナ政策が継続され、電力不足が生じるなかでも、政策支援により景気減速には歯止め

■ 中国政府は追加経済対策を策定し、景気下支えのため的を絞った政策支援を実施へ


本日、中国の主要経済指標が公表され、8月分の経済指標が概ね出揃った。鉱工業生産(前年比4.2%増)、小売売上高(同5.4%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来同5.8%増)はいずれも7月から増勢を強めた。ゼロコロナ政策下で新型コロナウイルス感染が続き、深刻な猛暑や干ばつにより四川省などで電力需給がひっ迫し、8月中旬に工場の稼働が停止したが、減税・税還付などの政策支援に支えられ、景気拡大ペースの鈍化に歯止めがかかった。なお、固定資産投資の内訳をみると、不動産投資(年初来前年比7.4%減)は5カ月連続で減少、製造業投資(年初来同10.0%増)も増勢鈍化傾向が続く一方で、インフラ投資(年初来同8.3%増)は4カ月連続で増勢が加速している。ゼロコロナ政策継続、不動産市場の低迷、若年層の失業、資本流出など経済の先行き不透明感が強まるなか、公的需要への依存度が高まっていることがうかがえる。

中国政府は、8月24日に開催された国務院常務会議にて5月に続く19項目の追加経済政策を策定することを決定し、インフラ投資促進、不動産市場支援、雇用対策など具体策の検討が進められている。16-24歳の失業率(18.7%)の高止まり、不動産販売(床面積ベース、年初来前年比23.0%減)の低迷、最優遇貸出金利(LPR)の引き下げに伴う人民元安進行や外貨準備高(8月末:3兆549億ドル)の減少など、調整が続いている項目を中心に的を絞った政策支援が中心となろう。景気下支え姿勢を強める一方で、「5.5%前後」とした2022年の成長率目標への言及は避けられている。事実上、数値目標は撤回されたとみられており、目標達成に向けて大規模な景気刺激策が導入される可能性は低い。

不動産市場や労働市場での構造調整、海外景気減速に伴う外需低迷を受けて、企業・家計の経済に対する先行き見通しは従前よりも慎重化している。ただ、今春の上海市などでの都市封鎖以降、企業や家計の間では投資・消費需要が繰り延べられており、ゼロコロナ政策が見直されれば、これらの潜在的な需要が表出し、比較的力強い回復が期待される。10月の中国共産党全国代表大会で選出される次期指導部が示す経済政策方針は、当面の景気の行方とともに慎重化しつつある民間部門の期待を左右することになるだろう。
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