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原油:OPECプラスは減産への転換を決定

2022-09-07

OPECプラスは需要減少などへの警戒感を強め、10月に減産に転じることを決定

実際の原油需給に及ぼす影響はほとんどなく、WTIの押し上げ効果は限定的だろう

石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟の産油国から成るOPECプラスは5日に閣僚級会合を行い、10月の生産枠を9月より日量10万バレル縮小し、同4385万バレルとすることで合意した。OPECプラスは新型コロナ禍からの需要回復に沿って2021年初めから20229月まで段階的に増産してきたが、世界の需要鈍化やイラン産原油の国際市場への復帰を警戒し、小幅ながら減産に転じることとなる。

サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は823日に、OPECプラスが需要の減少のほか市場の不安定さなどに対処するため、減産を迫られる可能性があると指摘。イラクやクウェートなど複数のOPECプラス構成国が同調していたことから、10月の減産は市場参加者の想定内の結果と思われる。それでも、産油国が需給緩和へのけん制を強めたとの見方から、原油先物価格(WTI)は上昇で反応した。

ただ、今回のOPECプラスの決定は、実際の原油需給にはほとんど影響を及ぼさないと思われる。国際エネルギー機関(IEA)の8月月報によれば、7月のOPECプラス(イラン、リビア、ベネズエラを除く)の生産量は日量4035万バレルと、生産目標(同4321万バレル)に届いていない。サウジアラビアやUAE、クウェートなど一部産油国は生産目標を達成しており、9月から10月にかけて生産枠の縮小に伴い減産となる可能性が高い。それ以外の国は投資不足などにより、そもそも生産枠に対して生産実績が追い付いていない状況にあり、生産枠の縮小が生産量に直接的には関係しないと思われる。今回のOPECプラスの減産合意は需要減少への警戒感を市場に示すアナウンスメント効果はあったものの、原油需給を根本的に変化させる決定ではなかったと解釈され、WTIの押し上げ効果は短期的かつ限定的となろう。
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