当面は株高の持続性を慎重に見極めるべき
2022-08-29
■ 実質金利上昇局面での予想PER上昇主導の株高に違和感
■ 主要国中銀は世界経済の構造転換による高インフレの定着を警戒
8月の米国株は米連邦準備理事会(FRB)の情報発信を市場参加者が都合よく受け取った典型的な値動きとなった。7月26、27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に行われた記者会見で、パウエル議長は「利上げペースを落とすのが適切になる可能性が高い」と発言した。今秋以降の利上げペース鈍化への期待の高まりを背景に、予想株価収益率(PER)の上昇にけん引されて、S&P500は1月に付けた過去最高値から6月の年初来安値までの下落幅の半値戻しを達成した。しかしながらこの間に、米10年国債利回りが急上昇したことを受けて実質金利は上昇に転じており、実質金利と強い逆相関の関係にある予想PERの上昇が主導する株価上昇には強い違和感がある。
昨日より米ワイオミング州ジャクソンホールで年次の経済政策シンポジウムが開催されており、日本時間の本日23時から行われるパウエルFRB議長の講演が注目されている。ここで、6月27-29日に開催された欧州中銀(ECB)フォーラムを振り返り、主要国中銀の基本認識を再確認しておきたい。同フォーラムの最終日に行われた米欧英の3中銀トップによる討論会で、グローバル化の流れが逆転し、労働力やエネルギーなどのコストが高まることが想定され、新型コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻という大きな供給ショックを経て、低インフレの時代は幕を下ろしたとの認識が共有されたことは意義深い。株価が本格的に底入れするためには、各国中銀がインフレおよびインフレ期待の抑制に成功し、金融引き締めの必要性が薄れたと判断される必要があるが、実現までには時間がかかるとみられる。それまでは、利上げペースの鈍化に対する投資家の思惑が強まり株価が上昇しても、その持続性を慎重に見極めるスタンスを維持すべきであろう。