News

2022年8月第5週目(29日~2日)の相場展望

2022-09-01

先週は週末の米国でのジャクソンホール世界中央銀行会合を控えて、それまでリスクオンとなっていた相場に利食いが入っていた。米国長短金利はやや下げ基調から持ち直しとなり、イベント前にポジションを解消する動きが顕著だった。ドル買いはやや落ち着き、ドル円は136-137円でのレンジ取引に終始、ユーロは固有の課題からパリティ価格を上値に軟調な動きが続いた。ユーロに関しては、圏内の景気悪化とインフレからの経済環境の悪化が背景にあって、ドル以外の要因もあって買いづらい展開となっている。

注目されたジャクソンホール会合において、パウエルFRB総裁は、「物価の安定を回復させるには金融引き締め策を一定期間維持することが必要となる可能性が高い」としたうえで「歴史は時期尚早な金融緩和を強く戒めている」「7月のインフレ率の低下は喜ばしいことだ」としながらわずか1か月の改善は、「インフレ低下を確信する内容にはほど遠い」と述べて物価の安定には時間がかかるという見方を示した。直近の経済市場からインフレのピーク打ちの数値が出ていたため、金利の引き上げに関してやや軟化する可能性を予想していたが、アメリカ経済にある程度の痛みを伴っても今後の利上げも強く行っているという意思を感じ取り、市場は再度リスクを織り込む形となった。米国株価は3%強の下落、金利は上昇しドル高へ傾斜した。市場は今年から来年前半までの利上げのあと、利下げの可能性まで織り込んで動いていたため、その牽制があったこともあり、短期で株を買い上げた向きが売りに回ったということであろう。金利や為替も同様である。週明けの今日は、米国2年債価格が3.45%まで上昇し直近の最高値を更新した。ドルは連動しており、ドル円は138円半ば、ユーロドルは直近の安値に接近している。相場の直近の動きでは、金利上昇に対して警戒感が大きく台頭していることで、週内はリスクをもう少し織り込む動きがありそうだ。

ナスダック指数(NAS100)は、今月半ばの直近高値からの半値戻しのレベルまで下落している。直近モメンタムの基調が下向きであるため、下押しの可能性は大きいが、短期ではここから大きく下げ続ける可能性は低いと思われる。今週は軟調推移となりそうで、下げるとしても61.8%押しのレベル12060ドル付近までであろうか。現在12400ドル台なのであと3%程度の下げまでは覚悟する必要があるだろうが、落ち着けば下値を固める展開になると考える。パウエルFRB総裁の発言は、市場の期待がやや剥落しただけで、その内容を予想していた向きも多かったはずで、楽観視してややオーバーシュートとなった株価の上げと金利の下げが調整されるというだけのような気がしている。可能性は低いと思われるが、もし早々に12000ドルを下回ることがあれば、一目均衡表の捩じれた雲を下に突破しそうで、下方向のリスクは増してくるので要警戒となる。上値は12750付近になると売りが出やすいレベルであるため抵抗となりそうだ。金利に敏感なナスダック指数が、しばらく相場のリード役となってくるだろうし、為替のドルはこの指数と逆連動することが見込まれる。

NAS100日足チャート


今週の米国雇用統計は、FRBの金利調整に影響を及ぼすインフレからの側面に加えてもう一つの大きな材料となる。インフレ抑制を進めるにしても雇用がある程度の水準で堅固で推移していることが条件となるからだ。ここが崩れると金利をどんどん上げることも難しくなるので、9月のFOMC利上げに向けての大きな指針となりそうだ。結果が悪化となれば金利は低下し、ドルは連動して下落、株価は逆に買われると見ている。好結果となれば金利への警戒感が台頭している今だから、株価は下落するだろう。もう一つ注目したいのが住宅関連の指数である。今週は米国の住宅価格指数が発表予定であり、価格指数の落ち着きが見られるかもFRBの注目点の一つだろう。欧州のECBは次の会合で大幅な利上げを目論んでいるようだが、ユーロはそれより景況感の悪化に見舞われているためユーロ安となりやすい展開が続いている。天然ガスの調達が難しくなっているため、今冬の不足から電気代の上げがどの程度あるのか心配されている。ユーロ圏の消費者信頼感指数やドイツやフランスのCPI発表も気になるところだ。またロックダウン下の中国で製造業PMIの発表があり、結果次第では特に隣国である日本には影響が大きくなってくるだろう。
TOP