News

国内投信市場動向:金利上昇が国内投資家に与える影響

2022-08-26

■ 7月の国内投資家は、上期(1-6月)のパフォーマンス不振を背景に投資を手控えたと推測

■ 上期の海外金利上昇に伴い、外貨への為替ヘッジコスト上昇と海外債券の魅力度アップに注目



7月の国内投信市場は、約4,500億円の資金流入超だった。ただし、株式・債券を問わず今年上期(1-6月)のパフォーマンスが不振だったことから、国内投資家の動きは鈍かった。顕著な例が過去12カ月間の合計で約6.4兆円の資金流入を記録している海外株式に投資するファンドであり、単月で約2,700億円の資金流入にとどまった。なお、7月は米国株(S&P500)が+9.1%、欧州株(STOXX欧州600)が+7.6%、日本株(TOPIX)が+3.7%、インド株(SENSEX)が+8.6%など、株式市場は上期から復調の兆しがみられていた。

米連邦準備理事会(FRB)をはじめ、主要中央銀行による大幅な利上げは続いており、不安定な金融市場の値動きを招いている。そうしたなか、今後、国内投資家は(1)為替ヘッジコストの上昇、(2)海外債券の投資妙味、の2点を考慮する必要があると考える。

(1)は、日本と主要国の短期金利差拡大が背景。そのため、円から海外資産へ投資する際の為替ヘッジコストが大きく上昇している。例えば、Bloombergの試算によると、昨年末から8月24日時点にかけて、「円から米ドル」への為替ヘッジコスト(3カ月ロール、年率)は、0.33%台から3.18%台まで上昇。同様に、「円から豪ドル」では0.22%台から2.75%台まで上昇している。日本と主要国の短期金利差拡大は来年にかけて続くとみられ、国内投資家が為替ヘッジを付けるか否かの選択は、投資収益に無視できない影響を与えよう。

(2)は、上期に海外金利が大きく上昇したことが背景。その結果、相対的な海外債券の投資魅力度は上がったとみる。Bloomberg債券指数の最低利回り(期待リターンに相当)は、8月24日時点で先進国投資適格(IG)社債指数は4.2%台、同ハイイールド(HY)社債指数は8.6%台をつけている。現時点で、2008年以降の平均値(IG:3.0%台、HY:7.4%台 / 月次ベース)を上回る。そうしたなか、7月の国内投信市場では、海外債券へ投資するファンドに対する3カ月累計の資金流出入が、今年に入り初めて流入超過に転じた。特に、金融市場の不安定感が続くと見込まれるなか、海外株式との分散投資で相性の良いIG社債に注目したい。
TOP