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米国:金融政策の焦点は短期的対応よりも中長期指針

2022-08-25

■ 米ジャクソンホール経済政策シンポジウムでは、経済制約の解消や政策正常化が議論の主眼に

■ パウエルFRB議長講演で示される手掛かりは、短期的な政策判断よりも中長期の政策指針か


25-27日に米ワイオミング州ジャクソンホールで年次の経済政策シンポジウムが開催される。従来、経済・金融政策に関する学術的な議論が行われる場であったが、リーマンショック以降、出席する各国の中央銀行高官が自国の金融政策方針に言及することが増え、近年は中央銀行が市場との対話を図る場へとその役割が変わりつつある。これまで、当時のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長によるQE2(量的緩和策第2弾)導入の示唆(2010年)、ドラギ欧州中銀(ECB)総裁によるインフレ期待低下への懸念表明(資産購入プログラム導入などの追加金融緩和の示唆、2014年)など、その後の政策修正に関する重要な手掛かりを示されてきた。各国中銀が金融政策のフォワードガイダンスを撤回するなか、金融政策方針を伝える機会として例年以上に高い関心が向けられている。

今年の議題は「経済と政策に関する制約の見直し」であり、主催するカンザスシティ連銀の公表文によれば、供給網の混乱など新型コロナパンデミックにより生じた経済制約や、財政の持続可能性、中央銀行の資産購入限度など異例の財政・金融緩和によって生じた経済政策上の制約に関して討議が行われるようである。経済制約の解消に向けたインフレ抑制や政策正常化に議論の主眼が置かれることが予想される。金融市場でも先週後半以降、金利上昇、ドル高、株安が進行し、FRBがインフレ抑制を最優先とする政策方針を堅持することを織り込むような値動きとなっている。

米国では、エネルギー価格高騰に歯止めがかかり、物価上昇ペース鈍化の兆候が表れ始めているが、供給制約、労働需給の不一致などの経済制約は解消されていない。今年の議題での討議が予定されるなか、26日の講演でパウエルFRB議長が将来的な利上げ減速などの政策経路に具体的に言及するのは時期尚早だろう。9月20、21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)についても、FRB高官の発言自粛期間中の9月13日に8月の米消費者物価指数の発表を控えており、利上げ幅などの政策判断に関する明言は避けられそうだ。具体的な言及が見込まれるのは中長期的な政策指針で、金融市場が一時織り込んだ早期利下げが否定される場合、来年以降の政策金利の織り込みに変化がみられるのか注目される。
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