米金融機関の融資基準は急速に厳格化
2022-08-23
■ 融資需要は再び強まり、運転資金確保への動きを示唆
■ 融資基準は急速に厳格化し、実体経済や企業業績の先行き不安を強める結果に
米連邦準備理事会(FRB)は8月1日に、最新のシニア・ローン・オフィサー・サーベイを公表した。これはFRBが米金融機関に対して3カ月前と比較した融資基準や資金需要などの変化について四半期ごとに聞き取り調査を行うもので、調査対象となる金融機関は6月16日に調査票を受け取り、6月30日までに回答した。これによれば、大・中企業(年間売上高5千万ドル以上)向け融資需要DI(全回答に占める需要増加の割合-需要減少の割合)は24.2と前回4月調査(12.3)から上昇した。設備投資やM&Aなど投資需要の回復が資金需要を押し上げる流れが一巡し、経営環境の先行き不透明感の強さを踏まえて運転資金を積み増そうとする動きが強まっていると考えられる。
また、融資基準DI(全回答に占める厳格化の割合-緩和の割合)はプラス24.2と、前回調査(マイナス1.5)から大幅に上昇。5四半期連続で厳格化方向への変化をみせ、6四半期ぶりにプラス圏(厳格化超過)となった。また、厳格化の幅は前期比25.7と新型コロナ禍の2020年7-9月期(同29.7)以来の大きさとなり、金融危機の最中にあたる2008年10-12月期(同25.9)と並ぶほど急速に融資基準が厳格化したことが明らかとなった。一部の米大手金融機関が4-6月期決算で大幅な減益を発表したほか、景気悪化による不良債権の発生やロシア関連の損失に備えて引当金を積み増したことと整合的となっている。
なお、融資基準DIは設備投資や鉱工業生産、新規雇用の先行指標として有効に機能してきたほか、企業の営業利益率に対して概ね3四半期の先行性が確認されている。金融情報会社リフィニティブの集計によれば、S&P500構成企業の予想一株あたり利益(EPS)は2022年、2023年ともに8.0%増と、それぞれ7月初め(9.5%増、9.3%増)から下方修正されている(8月19日時点)。市場では景気後退懸念がささやかれるなか、企業業績の先行き不透明感から株価が下押しされるリスクが高まりつつあることは認識しておきたい。