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インド中銀レビュー:利上げ姿勢は継続

2022-08-10

■ インド中銀は3会合連続の利上げを決定し、政策金利は2019年7月以来の高水準に

■ 物価上昇と通貨安への対応から、金融市場での追加利上げ観測は根強い


   本稿では、8月3-5日に開催されたインド中銀政策決定会合(MPC)について、整理する。インド中銀(RBI)は、政策金利のレポレートを50bps引き上げて5.40%とし、2019年7月以来の高水準とした。5月の緊急利上げを含めて3会合連続の利上げであり、RBIのインフレ抑制姿勢は維持されている。ダスRBI総裁によると、今回の50bps利上げ決定は全会一致だった。

   金融市場の追加利上げ観測は根強く、本稿執筆時点の短期金融市場では、今年の年末にかけて政策金利が6.00%まで引き上げられると織り込み済だ。これは、インドの物価上昇に歯止めが掛かっていない点が大きな要因と言える。RBIの許容レンジは、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率で「2-6%」。対して、6月のCPI上昇率は前年比7.01%と、6カ月連続でレンジ上限を上回っている。加えて、8月MPC後に出された声明で、RBIは「ここ数週間で食品と金属価格がピークを過ぎているが、依然見通しは不安定なまま」と物価上昇に対する警戒を維持しており、CPI上昇率について、少なくとも今年いっぱいは許容レンジ上限を上回るとの見通しを改めて示した。ただし、2022/23年度(2022年4月から2023年3月まで)の経済成長率予想と物価上昇率予想は、前年比7.2%と同6.7%に据え置いている。

   インドを巡っては、今後の資金流出とそれに関連したルピー安の進行にも注目が集まる。7月28日に国際通貨基金(IMF)は、今後のアジア新興国地域では政策金利を急速に引き上げる必要があるうえ、資金流出に対して警告を発した。特にインドでは、ロシア軍によるウクライナ侵攻以来、230億ドルが流出したと指摘。この間、RBIによる為替介入の効果もあって、インドルピーは対米ドルで7月に付けた過去最安値の80.21ルピーからやや持ち直しているものの、今後も下落圧力がかかりやすいとみられる。8月MPCでは特段ルピー安を巡る動向に触れていないが、ダスRBI総裁は7月22日の講演で「ルピーの不安定な値動きは許容しない」と述べている。RBIは物価上昇と通貨安に対して、政策金利引き上げと為替介入の継続で対処する方針は変わっていないと解釈している。
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