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英国景気:内需・外需ともに成長を下押しへ

2022-08-09

■エネルギー価格高騰による実質所得急減に対し、政府の早急な支援策は見込み難い

■4-6月期実質GDPは前期比ベースで5四半期ぶりのマイナス成長、ポンド安は継続へ


      世界的な天然ガス価格高騰を受けて、英ガス電力市場監督局(Ofgem)は4月から多くの世帯が利用するガス料金プランの上限価格を54%引き上げると発表。その後も値上げは食料品や衣類などあらゆる品目に及んでいる。一方、3-5月の失業率は3.8%と低水準で推移、平均賃金(ボーナス除く)は前年比4.3%増へ小幅に加速するなど、労働需給はひっ迫している状況が続く。だが、5月の実質賃金(3カ月平均)は同3.7%減と、エネルギー価格高騰に伴う物価高が重しとなり急減が続く。家計購買力の目減りが進むなか、政府は生活費高騰に対する支援が喫緊の課題だとしているが、ジョンソン英首相の辞任を受けて与党保守党党首選が実施される9月までは、支援策が打ち出されるとは見込み難い。

      新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限が2月に解除され、GDPの6割を占める個人消費が伸びたほか、政府支出を支えに設備投資も堅調となるなど、1-3月期の実質GDPは前期比0.8%増とプラス成長を維持。だが、今後は個人消費の低迷が警戒されるほか、天然ガスなどエネルギー価格高騰による輸入急増で、純輸出のマイナス寄与が大きくなる可能性が高い。市場予想では、12日公表の4-6月期(速報値)は同0.2%減に落ち込む見通し。英中銀(BOE)は利上げペースを加速しているが、インフレ率が中銀目標に届くのは2024年10-12月期と見通す。物価高と景気減速のスタグフレーションリスクが織り込まれるなか、足元のポンド上昇は既出のポンド安の揺り戻しに過ぎないとみる。ポンド円は高止まりの様相を呈しているが、対ドルや対ユーロでのポンド安は継続しており、心理的節目の165円を超えても一時的な動きになると予想する。
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