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MPCプレビュー:利上げ幅は25bpsか、50bpsか

2022-08-01

■ 8月MPCでは6会合連続の利上げ実施が濃厚だが、利上げ幅を巡る市場の見方は真っ二つ

■ 当行は8月MPCで50bps利上げを見込むが、秋口以降は利上げペース鈍化と予想


本稿では、8月4日開催の英金融政策委員会(MPC)を巡る動向について整理する。市場予想では、英中銀(BOE)は8月MPCで6会合連続の利上げを実施と見込まれている。ただし、利上げ幅については、25bpsと50bpsで市場の見通しが分かれている。

50bps利上げ見通しを後押しする要因は、大きく3点。すなわち(1)複数のBOE高官発言、(2)英国の物価上昇圧力の高さ、(3)主要中銀の利上げペース加速、が挙げられる。(1)は7月入り後、ベイリーBOE総裁、カンリフBOE副総裁、ピルBOEチーフエコノミストなど、主要メンバーが「インフレ抑制のために必要ならば、より速いペースでの利上げを検討する」趣旨の発言をした。(2)では、7月20日公表の6月英消費者物価指数上昇率が前年比9.4%へ加速し、1982年2月以来の高水準を付けた。(3)では、直近7月に欧州中銀(ECB)が50bps、米連邦公開市場委員会(FOMC)では75bpsの利上げ実施を決定。こうしたなかで、BOEは1997年以降では初めてとなる、50bps利上げに動かざるを得ないとの見方が浮上した。

一方で、25bps利上げにとどまるとの見方も根強い。その背景は大きく2点あり、(4)来年にかけての英景気後退の可能性、(5)英保守党の混乱、などが挙げられよう。(4)では、2023年の英国の経済成長率は、主要7カ国(G7)で最低水準に落ち込むと見込まれる。同年の成長率見通しは、経済協力開発機構(OECD)がゼロ%、国際通貨基金(IMF)がプラス0.5%だ。しかも、BOEは5月MPC時点で、すでにマイナス0.25%の見通しを示している。(5)では、7月7日にジョンソン首相辞任が発表されたが、9月5日の保守党党首選が終わるまで、次期首相は決まらない。そうしたなか、欧州委員会と英国は、欧州連合(EU)離脱協定の一部である北アイルランド議定書違反を巡って、対立が深まっている。政治・経済の安定を求めるうえでは、BOEは利上げペース加速を思いとどまった方が良いとの見方につながる。

現時点で当行は、8月MPCで50bpsの利上げ実施後、年末までに2.25%へ政策金利が上昇すると予想。秋口までは上記(1)-(3)を重視して利上げを進めるものの、その後は上記(4)の流れが無視できなくなり、利上げペースが鈍化するとの見立てだ。また、9月までにBOEが保有債券売却(QT)を開始し、金融引き締め手段は「利上げ+QT」に移行する可能性もある。
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