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ECB理事会レビュー:マイナス金利政策を解除

2022-07-25

■ ECBは市場予想を上回る利上げ幅を決定したうえ、市場分断化を防ぐ措置としてTPIを発表した
■ 今後の利上げペースは「データ次第」とするなど、欧州市場を巡る不透明感は高いままと言えよう
   7月21日に欧州中銀(ECB)理事会は、主要政策金利を50bps引き上げ、8年間に及んだマイナス金利政策を解除した。利上げ幅は市場予想を上回る結果となっている。加えて、市場分断化を防ぐ措置として、「伝達保護措置(TPI)」を発表し、多額の債務を抱える周縁国の金利上昇による域内格差を是正する姿勢を示した。
   利上げ幅について、ECBは6月理事会時点で「7月に25bps、9月に50bpsの利上げ実施を検討」としていた。ラガルドECB総裁は記者会見で、今回利上げ幅を拡大した背景を予想以上の高インフレリスクなど複合的な要因と指摘。一方で、改めて9月も利上げを続ける姿勢を示したが、「今後のデータ次第」として、予告していた50bpsの利上げ検討は取り下げている。

   また、6月の臨時理事会以降に検討を進めていたTPIについては、理事会に参加する25名の全会一致の賛成だったとしたうえで、具体的な4条件を発表した。つまり、(1)欧州連合(EU)の財政枠組みの順守、(2)深刻な経済不均衡の欠如、(3)財政の持続可能性、(4)健全で持続可能な経済政策、である。ただ、「TPIの適格基準は、ECB理事会が主権をもって検討する」としているものの、「可能であれば、欧州委員会・欧州安定メカニズム(ESM)・国際通貨基金(IMF)などの機関の分析」を参照するとし、ラガルドECB総裁自身が述べたように、詳細は明らかにしていない。ECB高官の講演などを通じて、今後も内容を探っていく必要があろう。

   当面の間、投資家は欧州市場への投資に関して、不透明感の高さを覚悟する必要があるとみている。これは、ECB理事会の決定やラガルドECB総裁記者会見後の市場の反応に基づく。例えば、短期金融市場では「9月の50bps利上げ実施」が約7割の織り込みとなっているが、総裁は25bpsの利上げ幅も否定していない。また、為替相場では利上げ決定直後のユーロは上昇したが、総裁記者会見後には下落に転じる場面もあった。さらに、TPI決定を受けても、ドイツとイタリアの10年国債利回り差は約2.3%まで拡大したままである。確かに、これらにはイタリアの政局不安やロシア産ガスの供給懸念なども反映されているとみられるものの、ECBの金融政策正常化を巡る不透明感も反映されている可能性がある。
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