中国経済:復調が明確になるが、持続性は不透明
2022-07-20
■ 外出制限解除に伴い6月の中国経済指標は大幅に改善したが、不動産市場の低迷は明確に
■ 新型コロナウイルス感染が再拡大し、景気回復の持続性は不透明に
6月分までの中国の主要経済指標が概ね出揃った。4‐6月の実質GDP成長率(前年比0.4%)は、上海市などで厳格な都市封鎖の影響が表れ、マイナス成長となった2020年1-3月期以来、最も低い成長にとどまった。2022年の中国政府の目標である「5.5%前後」の成長率達成への障壁は高く、年後半に成長ペースを急加速させる必要がある。
ただ、6月の主要指標では明確に景気の持ち直しが確認できる。鉱工業生産(前年比3.9%増、前月比0.84%増)、小売売上高(前年比3.1%増、前月比0.53%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来前年比6.1%増、前月比0.95%増)は、前月比をみると、小売売上高、固定資産投資が増勢を強め、5月に急増した鉱工業生産も高い伸びが保たれた。5月時点では生産を中心とした段階的な経済活動再開であったが、外出制限解除によって家計消費、インフラ投資などの回復も本格化していることがうかがえる。また、輸出(前年比17.9%増)は5月に引き続き大幅増加となり、上海港での物流の正常化も着実に進んでいる模様。対照的に、不動産市場は低迷が続いている。不動産投資(年初来同5.4%減)は減少基調を強め、不動産販売(床面積ベース、年初来同22.2%減)は前年同時期の水準を大幅に下回っている。主要70都市の新築住宅価格(Refinitiv推計、同0.5%下落)は2カ月連続で前年割れとなり、不動産業者の資金繰り悪化が連日のように報じられるなど、状況は一段と悪化している。
7月に入り、中国では北京市、上海市などの主要都市で新型コロナウイルスオミクロン株変異種「BA.5」の感染が拡大し、景気回復の持続性への不透明感が高まっている。上海市では19日から大規模検査が行われ、外出制限など厳格な活動規制の再導入への警戒が広がりつつある。中国政府が景気下支えに向けて、5月に発表した包括的な経済政策パッケージで発行枠の増額を決定した地方政府の特別債や、7-9月期に設立予定の5000億元規模の国家インフラ投資基金を活用して、インフラ投資を加速する方針が伝えられている。年後半は、成長率目標達成に向けて、過剰債務などの構造問題の解消よりも景気浮揚を優先する経済政策へ軸足を移す動きがみえ始めている。