News

カナダ中銀プレビュー:利上げペースが急加速へ

2022-07-12

■ BOCが政策金利を2.25%へ引き上げれば、1998年8月以来の利上げ幅となる

■ 物価と賃金上昇のスパイラルが明確になってきた一方、景気後退へのリスクも意識される


本稿では、7月13日に開催されるカナダ中央銀行(以下、BOC)の金融政策決定会合(以下、政策会合)へ向けた動向を整理する。市場予想では、BOCは今回の政策会合で、政策金利を1.50%から2.25%へ引き上げると見込まれる。予想通りならば一回の政策会合での利上げ幅は、1998年8月の100bps利上げ以来の大きさになる。

BOCは4月と6月の政策会合で50bpsずつの利上げを実施したが、7月の政策会合で利上げペース加速が見込まれる背景は、BOC幹部の発言などが挙げられる。前回の政策会合直後の6月2日には、ビュードライBOC副総裁はインフレ高進への警戒を表明した。これは、4月27日にマックレムBOC総裁が示した「政策金利は中立金利(推計2-3%)を超える水準まで引き上げる必要性が高まっている」との見解と同じ認識だ。また、同22日にはロジャーズBOC上級副総裁も、7月政策会合での75bps利上げの可能性を排除せず、「最も重要なことは、インフレ率を目標値に戻すこと」と述べた。同日に公表された5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年比7.7%と伸びが一段と加速し、1983年1月以来の高水準を記録している。

BOCがインフレ高進への警戒度を高めているのは、物価と賃金上昇のスパイラルが明確になってきた点が挙げられる。6月の失業率は4.9%へ低下し、統計開始以来の低水準を更新した。また、平均賃金は前年比4.50%上昇へ伸びが一段と加速。昨年1月以来の高水準となっている。7月8日時点でカナダの短期金融市場では、政策金利が今年の年末時点で、少なくとも3.5%まで引き上げられるとの見方が織り込まれている。

7月政策会合では、利上げ幅に加えて、迅速な金融引き締めが景気後退へ向かわせる速度に対するBOCの見通しに注目したい。確かに、本稿執筆時点までに公表されたカナダ経済指標からは、景気後退の気配は乏しい。しかしながら、前回の利上げ局面のピークが1.75%だったことを踏まえると、今年一年間で3%を超える急激な利上げを実施した場合、景気への悪影響も相応の大きさになりそうだ。BOCがスタグフレーション(高インフレと景気後退の併存)への警戒を一気に強める可能性もあるとみている。
TOP