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ブラジル株式市場:4月以降の調整が継続中

2022-07-06

■ ブラジル株式市場は、1-3月期に堅調だった一方、4-6月期は軟調地合いに流れが逆転した

■ 最大の貿易相手国である中国の景気や、国内の物価と大統領選挙を巡る動向に注目したい


  2022年上期のブラジル株式市場は、前半と後半で流れが逆転した。ブラジルの代表的な株価指数であるボベスパ指数は、年初来でマイナス6.0%(6月末時点)。この間、1-3月期はプラス14.5%と堅調だったが、4-6月期はマイナス17.9%に転じている。

  背景は、4-6月期にかけてボルソナロ政権と国営石油大手の対立が深刻化したことや、最大の貿易相手国である中国の景気減速懸念の強まりが挙げられる。国営石油大手では、3月末に当時の最高経営責任者(CEO)がボルソナロ政権に突如解任され、ブラジル株を巡る投資家心理が悪化した。さらに5月23日には在任約2カ月で現CEOへ交代するなど、過去2年間で3回のCEO交代が行われており、不透明感は残る。また、2020年時点で中国はブラジルの全輸出のうち約3分の1、全輸入のうち約5分の1を占める。5月にかけて上海市などの都市封鎖を受けた中国景気の減速懸念の強まりが嫌気され、ブラジル株に下押し圧力が加わった。

  今後も中国景気の動向を注視する必要はあるものの、経済指標からみたブラジル経済は、比較的底堅い状況と言える。1-3月期の実質GDPは前期比1.0%増だったほか、ゲジス経済相は「今年の経済成長率は2%前後になる」と自信をみせる。10月に大統領選挙を控えた現政権は、ルラ元大統領との支持率逆転を狙い、低所得者向け現金給付制度など追加の財政支出を打ち出すとみられ、景気浮揚の姿勢が明確になる見込み。また、3-5月の失業率は2016年初め以来の1桁台(9.8%)へ低下し、労働市場は堅調さが確認された。

   一方で、ブラジル中銀はインフレ抑制に苦慮しており、当初の想定よりも利上げ時期の延長が見込まれる点は、悪材料となりそうだ。5月の消費者物価指数(IPCA20)上昇率は前年比11.73%と、中銀目標レンジ(同2-5%)を大幅に上回る。加えて、エネルギー関連など税制変更が行われる可能性があり、財政リスクの点で現政権を巡る動向がブラジル市場の不透明感つながる点に変わりはない。そうしたなか、ブラジルレアルも3月末以降の株価下落と歩調を合わせ、対米ドルで下落基調が鮮明になりつつある。目先は、国内の物価と大統領選挙を巡る不透明感払しょくが、ブラジル株価とレアルの安定感を取り戻すカギになるとみている。
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